「外国人が増えると治安が悪くなるらしい」「外国人が優遇されている」――。7月6日に兵庫県尼崎市で開かれた「反うわさ戦略」の研究集会で、参加者からこうした「最近聞いた外国人に関するうわさ」が次々と披露された。
約50人の参加者が挙げたうわさについて、都留文科大の上野貴彦准教授(社会学)は「事実が含まれる部分もあるが、それ以上に不安やいらだちが表れている」と指摘。「新しい人が来て町が変わっていく時に摩擦や不安はどうしても起こる。それらに向き合う仕組み作りが、『反うわさ戦略』」と説明した。
バルセロナ発の市民参加型公共政策
上野准教授によると、反うわさ戦略は2010年、移民の増加が著しいスペイン・バルセロナで生まれた市民参加型の公共政策だ。差別や対立など問題の芽を早く察知し、「予防」を目指す。〈1〉行政が地域のうわさや不安を調査する〈2〉対応方法を市民に学んでもらう〈3〉イベントなどで多様性や共生をテーマにした対話の場を作る――という流れで進められる。
バルセロナでは、外国にルーツを持つ若者も含めた市民がイベントを開催。デジタルアートの専門家らも巻き込み、「差別的なうわさを聞いた時の、君の顔」という猫のミームを作成した。ユーモアで対話の糸口を作る試みで、市役所の公共広告にも使われた。
欧州評議会がハンドブック作成
この取り組みは反響を呼び、2018年には人権問題などを扱う国際機関「欧州評議会」がハンドブックを作成。欧州内外で自治体職員向けの研修を行い、イタリアなどでも戦略が取り入れられている。
国内では在留外国人が400万人を超え、過去最多となる中、反うわさ戦略を実行する自治体が出てきている。
袋井市では700以上の前向きなエピソード
静岡県袋井市は人口の約7%が外国人。1~3月には交流経験を紹介する展示を行い、「仕事で一緒に働く外国人が、教えた遠州弁を使ってくれた」(20歳代日本人)、「駅で知らない日本人が荷物を運ぶのを手伝ってくれた」(同ミャンマー人)など700以上の前向きなエピソードが集まり、好評だったという。
SNS時代の課題と尼崎の現状
昨今はSNS上などで排外主義的な言説も目立つ。上野准教授は「戦略で直接対抗できるものではない」とした上で、「不安や怒りから反射的に差別的投稿を拡散する人を減らすことにはつながる」と強調する。
尼崎市によると、市内の外国人は現在1万6000人ほどで人口の約3・5%を占め、増加傾向にある。研究集会では、可能な戦略として「演劇」を活用するなど、多様な意見が出された。外国人とどのように共生していくのか。市の取り組みが注目される。
(岡大賀)



