ロシア軍に向け、偵察ドローン発射を準備するウクライナ軍兵士。戦争継続中でも世界経済は好調だ。ウクライナはドローンを活用し、ロシア国内への反撃を行っている。彼らのドローンは、スペースX社の「スターリンク」の電波を使えるため、地球上のどこからでも操縦可能だ。国境から遠く離れたエネルギー施設を破壊することで、産油国ロシア国内でガソリン不足が発生しているという。
ウクライナ軍の柔軟なドローン戦術
ウクライナ軍の強みは、前線に権限が委譲されていることだ。スタートアップ企業のような柔軟さで、新たなドローン戦の手法を日々編み出している。一方、ロシア軍の下士官は上からの命令を厳守するため、臨機応変な対応ができないとされる。
ウクライナの「トロフィーラボ」も軍事的常識を逆転させるものだ。6月29日、ウクライナ国防省が公開したこのラボでは、これまでに鹵獲したロシア軍兵器の秘密をネット経由で同盟国に一挙公開する。従来、軍事上の機密は互いに囲い込むものだったが、それを「オープンプラットフォーム」にする逆転の発想である。元空将の永岩俊道氏によるNoteの連載記事が詳しい。
ロシア兵器のブランド力失墜リスク
全世界の武器輸出市場では、ロシア製兵器は「安い」「頑丈」「整備が簡単」という定評があり、インドなど多くの新興国が購入してきた。兵器は一度導入すると部品補充・点検・メンテナンス、操縦や整備教育まで徹底してその国に合わせる必要があり、途中で換えることは極めて困難だ。究極的には「兵器の輸出国を決して敵に回せない」ことになる。防衛装備品の輸出は「一粒で何度もおいしい」ビジネスだ。
しかし兵器の情報が細部まで公開されると、「この戦車はここが弱点」「この部品は供給リスク」「ソフトウェアは××製」といったことが露呈する。ロシア軍がウクライナ軍に押されている現状を見れば、「ロシア製兵器は意外と使えないのでは」という疑念を呼ぶ。ロシア製兵器のブランド力が失墜する恐れがあり、中長期的にロシアが受けるダメージは想像以上に大きい。
戦争がもたらすイノベーション
この「トロフィーラボ」も従来の軍事的常識の逆転であり、一種のイノベーションと言える。総動員体制の下で日々真剣勝負をしていると、「おっと、その手があったのか」ということが起きやすくなる。「戦争は発明の母」といわれる所以だ。対話する生成AIがどんどん賢くなっているように感じるのも、実は戦争に使われているからかもしれない。
「戦争にもかかわらず世界経済は好調」なのか、それとも「戦争のおかげで世界経済は好調」なのか。好むと好まざるとにかかわらず、われわれは戦時下の世界で生きている。その事実から逃げられない。これから先も、「アッと驚く大発明」に用心していく必要がありそうだ。



