米国のトランプ政権が国際刑事裁判所(ICC)の「解体」をめざし、ICCそのものへの制裁に踏み出した。これまで赤根智子所長を含む裁判官や検察官ら個人に制裁を加えてきたが、さらに圧力を強めた形だ。標的とされたICCとはどんな組織なのか。何が起きているのか。ポイントを解説する。
ICCとはどのような組織か
ICCはオランダ・ハーグに本部を置く、独立した常設の国際裁判所だ。捜査対象となるのは、集団殺害犯罪、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪。こうした罪には拷問や性暴力のほか、15歳未満の子どもを軍隊や武装集団に参加させることなども含まれる。裁かれるのは国ではなく個人である。
第2次世界大戦の戦勝国による国際軍事裁判などと違い、各国政府や国際機関から独立した国際裁判所をつくるため、2002年に誕生した。現在、日本を含む125カ国・地域が加盟している。
米国による制裁の内容
米国務省は今年7月、「米国の主権に対するICCの脅威を取り除く」との声明を発表した。「ICCは、米国の国益のために働いている米国の軍人や官僚を起訴し、収監する権限があるとしている」と理由を挙げ、「脅威を取り除くためにどんな外交手段も除外しない」と訴えた。
その約1カ月後の8月18日、赤根氏と検察局所属でセネガル出身の弁護士を制裁対象に指定した。赤根氏ら制裁を受けている職員は、米国資本の銀行口座やクレジットカードが使えなくなっている。米国への入国も原則禁止されるため、米ニューヨークの国連本部で開かれる予定だったICC締約国会議の年次会合はハーグへと会場が変更された。
さらに米国務省は10月9日、ICCそのものも制裁対象に指定した。「この無法な裁判所との取引を禁止し、資金源を断ち切り、運営能力をまひさせる」と説明している。
制裁発動で懸念される影響
米国は制裁の発動までに6カ月の猶予があるとしているが、実際に発動されれば、ICCの業務に支障が出ると懸念されている。ICCはこれまで、米企業製のITシステムを使って人事や財務、情報管理や通信などを行ってきた。こうした機能が使えなくなり、捜査や審理、被害者への賠償金の支払いなどにも影響が及ぶ可能性がある。