介護現場の人手不足、AIで業務効率化 訓練提案や健康管理で負担軽減
介護現場の人手不足、AIで業務効率化 訓練提案や健康管理

人手不足が深刻化する介護現場で、人工知能(AI)を活用した企業の技術開発やサービスが広がっている。高齢化で介護人材の必要性は高まる一方、体力的な負担の大きさから人材確保は容易ではない。各社はAIの活用でスタッフの負担軽減と介護の質の向上を目指す。

各社がAIサービスを開発

シャープは5日、東京都内の特別養護老人ホームで、高齢者の身体機能を維持・向上させる訓練をAIが考案する「AIトレーナー」の実証実験を始めた。テレビにウェブカメラと専用アプリを接続し、入所者の姿勢や体の動きをAIが分析して適切な運動や時間、頻度を提案する。介護現場では利用者ごとの訓練計画の策定や記録といった業務負担が大きく、どの程度軽減できるかやプログラムの有用性を検証し、実用化につなげる。

パナソニックホールディングスも、高齢者の健康状態に異変が生じる予兆を把握するAI技術を開発した。ベッドの下に設置したセンサーで心拍数や呼吸数、睡眠状況などのデータを取得・解析し、結果を自動生成された文章やグラフでスタッフに知らせる。介護施設で実証実験を行い、2027年度の事業化を目指す。AIソリューション課の山口勝久課長は「異変の予兆を捉えれば、ケアの質を高められる」と説明する。

深刻化する人材不足

厚生労働省が24年に発表した推計では、22年度の介護職員215万人を基準とした場合、26年度に25万人が不足し、40年度には不足数が57万人に上る。高齢化で職員の必要数は増えるが、増員が追いつかなければ大幅な不足が生じる。こうした状況を受け、企業は人材の不足分をAIで補うサービスの展開に乗り出している。

NTTデータは、介護事業者や医療法人向けに販売している会話サービス「ボイスタ!」を10月に刷新した。高齢者が専用端末に話しかけると、会話の内容からAIが体調や気分の変化、不安に感じていることを把握・分析し、適切なケアにつなげる。オムロンは今年度中に、介護予防のケアプラン作成支援システム「ハレクル With」のAI機能を拡充する。「足の筋力が低下し、家事に支障が出ている」といった高齢者の課題に応じて、AIが生活機能改善訓練や体操指導などの支援計画を提案する。現在、計画の作成には速くても30分程度かかるが、AIを活用すれば最短10分に短縮できるという。

普及に向けた課題

だが、普及には課題もある。介護労働安定センターが25年、介護保険サービス事業者にアンケートを実施したところ、回答した約8900事業所で、ロボットなど先端技術の導入課題(複数回答)として「導入コストが高い」(68.1%)、「職員が使いこなせない可能性が高い」(37.2%)といった声が目立った。AIでも同様の課題が生じる可能性は高く、コスト低減や介護職員への技術指導を充実させられるかが普及に向けた鍵になる。