トランプ米大統領が、米国とカナダの国境にまたがるオンタリオ湖の名称を「アメリカ湖」に一方的に変更したことが波紋を広げている。米国内では地図アプリの一部で表示が変更されたが、対応は割れており、カナダや両国の地元自治体は変更を拒否している。
地図アプリで対応が分かれる
米国内では、8月30日にはグーグルマップ上のオンタリオ湖の表示がアメリカ湖に切り替わった。トランプ氏が27日、オンタリオ湖をアメリカ湖に改称する大統領令に署名し、米政府の地名情報システムの登録名称が変更されたことを受けた措置だ。
グーグルは各国政府の公式情報に基づいて地名を表示している。今回もこの方針に沿って米国内ではアメリカ湖、カナダではオンタリオ湖、それ以外の国ではオンタリオ湖(アメリカ湖)の併記に変えた。
アップルの地図アプリでは31日時点でも米国内でオンタリオ湖と表示している。トランプ氏がアップルに改称を直接働きかけているといい、変更される可能性が指摘されている。
連邦政府内での効力と国際的な反発
米国では、連邦政府が公式に使う地名は内務省などが連邦法に基づいて決定する。今後、連邦政府の地図や契約書、文書などでは新名称が使われる。ただ、効力は基本的に米連邦政府内に限られる。カナダなど他国に使用を強制することはできない。
世界共通の地名を決める国際機関もないため、カナダは引き続きオンタリオ湖を使用している。トランプ氏が2025年にメキシコ湾を「アメリカ湾」に変更した際、メキシコが名称を変えていないのと同様だ。
カナダのカーニー首相は「昔も、今も、これからも、その名はオンタリオ湖だ」と反発した。地元ニューヨーク州のホークル知事(民主党)も改称に反対しており、米民主党は31日、名称をオンタリオ湖に戻す法案を提出した。オンタリオ湖を訪れていた人々は地元テレビ局に「全くばかげている」「名前を書き換えたからといって、アメリカ湖になるわけではない」とあきれた様子で話した。
さらなる改名の示唆と世界各地の地名対立
トランプ氏は大統領令に署名した際、「あとは海だけだ。大西洋か太平洋の名前を変えなければならないかもしれない。両方かもしれない」と述べるなどさらに踏み込む構えを見せる。地名の変更は、権力の誇示にはつながるかもしれないが、同盟国との新たな摩擦を生む可能性が高い。
地名をどう表記するかを巡っては、世界各地で対立が起きている。イランと湾岸アラブ諸国の間では「ペルシャ湾」と「アラビア湾」の呼称が対立している。英国が統治する南大西洋のフォークランド諸島は、領有権を主張するアルゼンチンが「マルビナス諸島」と呼んでいる。南シナ海についても、フィリピンは一部海域を「西フィリピン海」と呼称する。
日本も例外ではない。北方領土や島根県の竹島、沖縄県の尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土だが、ロシアや韓国、中国での呼称はそれぞれ異なる。
オンタリオ湖は五大湖の最東端にあり、カナダのオンタリオ州と米ニューヨーク州にまたがる。「オンタリオ」の名は先住民の言葉に由来し、「輝く水」などを意味する。17世紀から地名として使われている。両国は条約に基づき湖からの流出量などを共同管理している。



