年収3千万円でも住めないAIの街、サンフランシスコの光と影
年収3千万円でも住めないAIの街 サンフランシスコの光と影

「脳の谷(セレブラル・バレー)」と呼ばれ始めた街がある。アメリカ西海岸のサンフランシスコだ。街の南に広がるシリコンバレーにちなんだ呼び名で、世界から集まった優秀な頭脳がAI(人工知能)という新たな「脳」をつくり出す。熱狂するAIブーム、あるいはAIバブルの震源地で何が起きているのか。

世界の頭脳が集まる理由

クリスティン・チャン(19)は、子どものころからの目標だった米ハーバード大への入学を果たした。周りにはエリートの王道とされるコンサルタントを目指す人が多かった。確かに、ヨット上のパーティーで人脈を築いたり、城を借り切ってディナーを楽しんだりするのは新鮮な経験ではあった。だが、すぐに違和感を抱いた。「私がやりたいのはこれじゃない」

中国系のデータ科学者の父と専業主婦の母の元で育ったチャンは、子どものころから友人と協力して問題を解くのが好きで、高校時代には地域の教育をより良くするための政治参加もした。コンピューターサイエンスと政治学を大学の専攻に選んだのは自然な流れだった。

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イノベーション(技術革新)を起こして問題を解決し、政治のような公的な分野にも大きな影響をもたらす。それができるスタートアップはおもしろそうだと思った。「でも、ハーバードには起業文化はない」

共同生活で起業する若者たち

1年で休学し、昨夏にルームメートとともに4千キロ以上離れたサンフランシスコにやって来た。英オックスフォード大で認知神経科学の博士号を取った姉も、サンフランシスコでAI企業を立ち上げていた。

この街には共同生活を送る起業家が多い。マーク・ザッカーバーグもシリコンバレーに起業仲間で家を借り上げてフェイスブック(現メタ)を成長させた。新しいAI製品を開発して競い合うイベントが開かれ、投資家たちがその場で出資を決めることもある。同居者と共に起業したり、客になったりもする。

チャンもその一人となった。「同じ屋根の下で商品を売り込んでいたり、資金調達の交渉をしていたり、アイデアを出し合ったり。本当に刺激的だった」。廊下に出れば同じように苦悩し、寝ずに働く仲間がいて、すぐに相談したり雑談したりできる環境はありがたかった。

投資家の「青田買い」と高騰する家賃

チャンは、医療機関や製薬会社が患者に向けて送る案内やメッセージが患者にどう受け止められるかを、AIがシミュレーションして事前にテストするシステムを開発。すぐに投資家から2億円の資金を得た。いまは、同じく大学を休学中の仲間5人とともに、自分のアパートを職場として開発を続ける。

こうした共同生活の家は、起業家たちが借り上げることもあるが、最近は投資家が買いあさる。起業家の「卵」に家賃なしで貸し出すほか、成功した起業家に引き合わせて支えることもある。世に出ていない天才を誰よりも早く見つけ、囲い込む「青田買い」が狙いだ。「99%失敗しても1%の大成功があれば」

中国出身のロッキー・ユーは…

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