香港で中国共産党に批判的な書籍を販売していた「銅鑼湾書店」を創業し、店長を務めた林栄基さんが7月2日、台湾で亡くなった。70歳だった。中国当局に約8カ月拘束された後、香港の自由の危機を訴える象徴的な存在となった。香港と本を愛し、自分が正しいと思うことを淡々と貫いた書店人だった。
「自分は書店の単なる店長」
「自分は書店の単なる店長なんです」。それが口癖だった。だが、その「単なる店長」がいた香港の銅鑼湾書店は、決して普通の本屋ではなかった。中国共産党内の権力闘争や幹部のスキャンダルなどを扱う「禁書」を並べる書店だった。言論統制が続く中国にあって、香港という街が持っていた自由を体現する存在でもあった。
もともとは親中国系の書店で働いていた。だが、民主化を求める若者らを中国が武力で弾圧した1989年の天安門事件に憤慨し離職。94年に銅鑼湾書店を立ち上げた。
書店関係者5人が相次いで失踪
その名が注目を集めたのは2015年から16年。自身を含む書店関係者5人が相次いで失踪し、中国で拘束されていたことが判明した。約8カ月間拘束された後、香港にある顧客リストを持ち出すよう指示を受け、1日限りとの条件で香港に戻った。
指示に従って顧客の名を中国側に渡したとされる。背後の銅鑼湾書店の看板は今年撤去されたが、雑多なビルが並ぶ香港になじんでいた。



