トランプ前米大統領が導入した関税政策は、日本企業の収益とサプライチェーンに深刻な影響を及ぼしている。特に自動車、鉄鋼、電子部品などの主要産業では、追加関税によるコスト増加が顕著だ。本稿では、各業界の具体的な影響と企業の対応策を詳しく解説する。
自動車産業への打撃
日本から米国に輸出される完成車には、現在2.5%の関税が課されているが、トランプ氏はこれを25%に引き上げる可能性を示唆している。日本自動車工業会の試算によれば、関税が25%に引き上げられた場合、日本車の米国販売価格は平均で約30万円上昇し、年間販売台数が50万台減少する恐れがある。トヨタ自動車は「北米での現地生産比率を現在の70%から90%に引き上げる計画だ」と述べている。ホンダもオハイオ州の工場でSUVの生産を増強し、関税回避を図る。
鉄鋼・アルミニウム関税の影響
2018年に発動された鉄鋼25%、アルミニウム10%の追加関税は、日本鉄鋼連盟のまとめで、日本鉄鋼メーカーの対米輸出量を約30%減少させた。日本製鉄は「米国子会社での生産拡大により、関税の影響を最小化する」とコメントしている。一方、中小の鉄鋼加工業者はコスト吸収が難しく、一部は米国市場から撤退を余儀なくされている。
電子部品・半導体の関税リスク
電子部品分野では、スマートフォンやパソコンに使用される半導体や電子基板が関税対象となる可能性がある。経済産業省の調査によると、日本の電子部品メーカーの対米輸出額は年間約1.2兆円に上り、関税が10%かかった場合、業界全体で1200億円のコスト増になると試算される。ソニーセミコンダクタソリューションズは「米国顧客との価格交渉を進めるとともに、ベトナムやタイでの生産シフトを検討している」と明らかにした。
サプライチェーンの見直し加速
関税リスクを背景に、日本企業のサプライチェーン再編が加速している。日本貿易振興機構(JETRO)のアンケートでは、米国に関連するサプライチェーンを持つ日本企業の約40%が「生産拠点の移転または分散を検討している」と回答。特にメキシコ経由で米国に輸出する企業は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の厳格な原産地規則も重なり、生産拠点を米国内に移す動きが強まっている。
企業の具体的な対策事例
パナソニックは米国テネシー州の電池工場に約4000億円を追加投資し、EV向け電池の現地生産を拡大する。同社の担当者は「関税の影響を抑えるだけでなく、米国政府のEV補助金を受けるためにも現地化が不可欠だ」と語る。また、デンソーはミシガン州に新工場を建設し、半導体モジュールの生産を開始。これにより、日本からの輸出量を半減させる計画だ。
今後の展望とリスク
関税政策の行方は不透明で、日本企業は複数のシナリオに備える必要がある。第一生命経済研究所の主席エコノミストは「トランプ氏が再選された場合、関税はさらに強化される可能性が高い。日本企業は米国内での生産体制を早期に確立すべきだ」と指摘する。一方、バイデン政権が継続した場合でも、鉄鋼関税は維持される見通しで、長期的なコスト上昇は避けられない。



