トランプ米政権による140億ドル(約2兆2600億円)規模とされる台湾への武器売却計画が、いまだ結論を出せずにいる。トランプ大統領は5月の訪中後に「まもなく判断する」と述べたが、具体的な動きは見られない。この状況について、元空将補で国際政治学者の尾形誠氏は「トランプ政権の武器売却の実績を分析すると、台湾を都合の良い商売相手と考えている可能性がある」と指摘する。
武器売却の内訳と台湾の新戦略
トランプ政権は2025年12月、過去最大規模となる総額111億ドルの武器売却を承認した。内訳は地対地ミサイル「ATACMS」や高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」など8種類で、いずれも蔡英文前政権が2023年の国防白書で示した新たな国防戦略に必要な兵器だという。
台湾の新たな国防戦略は、従来の「中国軍を絶対に台湾に上陸させない」という方針から転換し、市街戦も想定した上で、最終的には台湾での地上戦で中国軍を撃滅することを目指す。この変化は2022年2月に始まったウクライナ戦争の影響を強く受けたものだ。
頼清徳政権もこの新戦略を基本的に引き継ぎ、さらに「全社会防衛レジリエンス(回復力)の強化」を掲げ、社会全体の国防力支援や民間防衛、認知戦対応、災害対応の強化を進めている。
トランプ政権の商売優先姿勢
尾形氏は、トランプ政権が140億ドルという巨額の売却額を公表しながら、具体的な武器の内容を明らかにしていない点を問題視する。「トランプ氏の訪中を念頭に、米農産物の対中輸出などをめぐる取引材料として語っただけなのかもしれない」と述べ、台湾を中国との交渉の駒として扱っている可能性を指摘する。
また、2025年12月に承認された111億ドルの武器売却についても、尾形氏は「台湾の国防戦略に合致しているとは言え、本当に有効なのか疑問視する声が台湾国内で上がっている」と語る。特に、ウクライナ戦争で実証されたドローンや電子戦への対応が不十分との指摘があるという。
日本への課題
尾形氏は、台湾の新戦略が日本にも重要な示唆を与えていると強調する。特に、ウクライナ戦争の教訓から、非対称戦争や民間防衛の重要性が高まっており、日本も同様の備えが必要だと指摘。「台湾は日本と同様に、中国の軍事圧力に直面している。台湾の取り組みから学ぶべき点は多い」と述べた。
さらに、トランプ政権の姿勢が日本に対する武器売却にも影響を与える可能性について、「米国が日本を単なる市場と見なすようになれば、安全保障上の信頼関係に亀裂が生じかねない」と警鐘を鳴らす。
トランプ政権の台湾への武器売却計画は、米中関係や台湾海峡の安定に大きな影響を与える可能性がある。尾形氏は「台湾が単なる商売相手ではなく、重要な安全保障パートナーであることを米国に認識させる必要がある」と結論づけている。



