新愛称「富山高山すし空港」が正式決定
富山県の富山空港(富山市)の愛称が、従来の「富山きときと空港」から「富山高山すし空港」に変更されることになった。新田知事が7月8日の定例記者会見で発表した。他県の地名である「高山」(岐阜県高山市)を採用した点に、県内外から賛否の声が上がっている。空港の経営が危機的な状況にある中で、インバウンド(訪日外国人客)の増加を狙った大胆な名称変更だが、実際の利用客増につながるかは未知数だ。
知事が語る戦略:世界共通語としての「すし」と「高山」ブランド
新田知事は会見で、空港を「目的地に向かうための拠点」と位置づけ、インバウンドが事前にインターネットなどで検索した際に興味を引く愛称を選んだと説明した。特に「高山」については「世界的な観光地であり、富山空港が高山への空の玄関口だと認知してもらいたい」と強調。また「すし」は「今や世界共通語で、インバウンドの関心を引きつける強力なフックになる」とし、県のキャッチフレーズ「寿司といえば、富山」のさらなる発信強化につなげたい考えを示した。
県によると、空港の愛称に他県の地名を入れるのは、島根県益田市の「萩・石見空港」に次いで2例目。岐阜県内には空港がなく、高山市の最寄り空港は車で約2時間の富山空港となる。ただし、空港と高山市を直接結ぶ公共交通は未整備で、空港到着後はまず富山駅まで移動する必要がある。新田知事は「2次交通の充実は避けて通れない。岐阜県側とも連携してスピード感を持って進めたい」と述べた。
県民からは困惑の声:なぜ高山?富山じゃないの?
新愛称に対して、富山県民からは戸惑いの声が目立つ。同日、空港を訪れた富山市の自営業者(40代男性)は「なぜ高山を入れたのか。富山ではなく高山に観光客が集中するのではないか」と首をかしげる。こうした声に対し、新田知事は「富山には魅力あふれる観光地があるが、このままでは空港を存続させることも難しくなる。空港を成長させていくための第一歩として受け止めてほしい」と理解を求めた。
一方、富山市や経済界からは前向きな意見も出ている。藤井裕久・富山市長は「この愛称を契機に関係自治体と一層連携し、広域観光の推進と関係人口の拡大に取り組む」とコメント。県商工会議所連合会などでつくる「富山空港を発展させる会」の庵栄伸会長は「世界での認知度が高まり利用促進につながる。飛騨高山地域の人に富山空港への愛着を持ってもらうことも期待できる」と支持を表明した。
岐阜県側の反応:期待と懸念
名称を「貸した」岐阜県側でも様々な反応が広がった。江崎禎英知事は「『飛騨高山』が世界に向けて発信される。富山県と連携を深め、国内外から訪れる人たちにとって魅力ある地域になるよう取り組む」とコメント。県観光連盟の葛西信三会長も「飛騨高山を世界中に知ってもらえる。多くの人が岐阜に来るようになることを期待する」と述べた。
田中明・高山市長は「富山県が決定されたことで、何かを申し上げる立場にはないが、富山県民がどう感じているのかを気にかけている」と配慮を示し、「広域観光の推進が両地域の発展につながることを望む」とした。飛騨・高山観光コンベンション協会の堀泰則会長(78)は「富山の人たちがどう感じるかは気になるが、高山側には懸念は一切なく、プラスしかないと言っていい」と述べた。高山市の観光地「古い町並み」で民芸品店を営む女性(52)は「名前はぴんと来ない。ただ、新しい愛称をきっかけに、富山側のルートが活性化してくれれば、うれしい」と期待を寄せている。
経営危機が変更を後押し:公募せず専門家の意見を優先
もともとの愛称「富山きときと空港」は県民に愛着を持ってもらおうと公募で決まった経緯がある。今回の選考過程で県民の声を広く募らなかったことについて、新田知事は、空港の経営が危機的な状況にあったため、ブランディングなどに詳しい専門家の意見を踏まえて決定したと説明した。数字に表れるのはこれからだが、新愛称が富山空港の利用客増につながるか、今後の動向が注目される。



