サウジアラビア「世界最大のビル」計画、進捗0.2%で凍結…8兆円プロジェクトの悲惨な末路
サウジ「世界最大ビル」計画進捗0.2%で凍結…8兆円の末路

サウジアラビアが国家の威信をかけて計画した「世界最大のビル」が、事実上の頓挫状態にある。首都リヤド郊外の砂漠に建設予定だった一辺400メートルの巨大立方体ビル「ムカーブ」(アラビア語で立方体の意)は、容積でギザの大ピラミッド約25個分、延床面積200万平方メートル(東京ドーム約43個分)という壮大なスケールを誇った。しかし、今年1月に工事が凍結され、完成目標も2030年から2040年に10年延期された。ロイター通信が4人の関係者の証言をもとに報じている。

進捗率0.2%、発注済み工事はわずか161億円

不動産コンサルタントのナイト・フランクの試算によると、リヤドの新都心「ニュー・ムラッバ」地区の総事業費は約500億ドル(約8兆800億円、1ドル161.70円換算)。これはヨルダン一国のGDPに匹敵する規模だ。しかし、計画凍結前までに発注済みの工事は約1億ドル(約161億円)と、全体の0.2%にすぎなかった。構想の壮大さに比べ、実態は全く追いついていなかったのである。

資金源に赤信号、PIFの評価損1.29兆円

計画凍結の最大の原因は、資金源である政府系ファンドの公共投資基金(PIF)の財務悪化にある。PIFは2024年の年次報告で、ムカーブを含む大型開発プロジェクトへの投資で3年間に計約80億ドル(約1兆2900億円)の評価損を計上したことが判明した。運用資産は約9250億ドル(約149兆円)に上るが、巨額の損失がプロジェクトの持続可能性に疑問を投げかけている。

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「垂直都市」の夢、ホログラフィック・ドームも幻に

ムカーブは単なるビルではなく、一つの「垂直都市」として構想された。内部はドーム状にくり抜かれた中空で、中央には巨大タワーがそびえる。特に注目されたのは、直径・高さともに340メートルのホログラフィック・ドームで、東京タワーがほぼ丸ごと収まる規模。500室のホテルが壁面全体にホログラム映像を投影し、宿泊客を世界各地にいるかのように体感させる計画だった。しかし、これらの構想も全て宙に浮いた。

住宅10万戸の空約束、国民は増税と住宅高騰に苦しむ

ムカーブ計画では、住宅10万4000戸の整備と33万4000人の雇用創出が掲げられていたが、これらも実現のめどが立っていない。一方で、サウジアラビア国民は深刻な住宅価格の高騰と増税に直面している。消費税は2018年の5%から2020年には15%へと3倍に引き上げられ、国民の生活を直撃。国家プロジェクトに巨額の予算が投じられる一方で、国民負担は増すばかりだ。

専門家の指摘「富裕層だけの街になる」

計画当初から、ムカーブは一部の富裕層向けの開発に過ぎないとの批判があった。専門家は「ムカーブはリヤドのエッフェル塔になるはずだったが、実際には富裕層だけの閉鎖的な街になる」と警鐘を鳴らしていた。現在、サウジアラビアでは家賃の高騰が社会問題化しており、中間層以下の国民は居住費の負担に耐えかねている。

ビジョン2030の旗印も陰り

ムカーブは、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が主導する国家戦略「ビジョン2030」の象徴的プロジェクトの一つだった。石油依存からの脱却を目指し、観光やエンターテインメント分野に巨額投資を行う同戦略だが、ムカーブの凍結はその実現性に大きな疑問符を付けた。PIFの評価損や、他大型プロジェクト(全長170キロのリニアシティ「ザ・ライン」など)の遅延も相まって、ビジョン2030全体の見直しが迫られている。

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「持続可能性」は見せかけ? 砂漠の密閉ビルの矛盾

ムカーブは「サステナブルな垂直都市」を謳っていたが、灼熱の砂漠に密閉された巨大ビルが本当に環境に優しいのか、疑問視する声も多い。冷房や水の供給に膨大なエネルギーを要することが予想され、持続可能性は看板倒れに終わる可能性が指摘されていた。

サウジアラビアの壮大な夢は、現実の重みに押しつぶされようとしている。国家プロジェクトの失敗は、国民生活にさらなるしわ寄せをもたらすことが懸念される。