軍政下ミャンマーで和食店を守る78歳日本人店主「利益より家族を守る」経営
軍政下ミャンマーで和食店守る78歳日本人店主の経営哲学

ミャンマー・ヤンゴンの静かな住宅街にある和食店「角 ホーン」は、軍政下の厳しい情勢の中でも営業を続けている。店主は78歳の日本人、大舘堯さん。なぜ彼は危険を顧みず店を閉めないのか。その答えは「人との縁」と従業員の生活を守るという強い信念にある。

「結局は人との縁ですよ」

大舘さんは日本で40年以上商売をしてきた蓄えを元に、ミャンマーで店を続けている。「店を続けることで守れる生活がある。それが今の私にできることです。私はミャンマーを終の棲家と考えています。親族に何かあれば別ですが、それ以外で日本へ帰ることはないと思います」と語る。

現在の店舗は、大舘さんを「日本のお父さんのように慕う」ティダさんの持ち家である。ティダさんの兄弟も近くに物件を所有しており、地域の結束が店を支えている。

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利益ではなく従業員の生活を守るため

ティダさんは「正直、働かなくても家賃収入があります。友人からは『どうしてそこまでして店を続けるのか』と不思議がられることもあります」と話す。それでも店を続ける理由をこう説明する。「この店は、私が日本のお父さんのように慕うマスター、大舘さんの店です。そして、ここで働く従業員はもちろん、その家族も私たちの家族なんです。私には夫はいますが、マスターと同じで子どもはいません。だから、従業員たちは私にとって家族のような存在です」

大舘さんは現在、新型コロナウイルス感染症の後遺症に加え、交通事故による骨折や心臓の病を抱え、以前のような生活は難しくなっている。それでも従業員たちが日々の生活を支えている。

「お金が続く限り、この店は続けたい」

ティダさんは「もしマスターがこの世からいなくなっても、お金が続く限り、この店は続けていきたいと思っています。私もマスターもこの世からいなくなった後のことは、正直わかりませんけどね」と笑いながら語る。

大舘さんの人生を振り返ると、転機にはいつも「人との縁」があった。童門冬二氏との出会い、ティダさんをはじめとするミャンマー人従業員たちとの出会い、そしてヤンゴンで店を支える従業員たちとの出会い。事業を大きくすることより、人との縁を大切にすること。利益を追うことより、従業員の暮らしを守ること。「結局、人との縁ですよ」という大舘さんの一言には、自身の人生、ティダさんの人生、そして「角 ホーン」の歩みがにじんでいた。

ヤンゴンの静かな住宅街で、今日も「角 ホーン」の明かりが灯っている。国境を越えて育まれた「人との縁」は、この店で今日も、変わらず受け継がれている。

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