フランス国民議会(下院)は15日、重い病などに苦しむ患者が、致死薬によって自ら死を選べるようにする「死の援助」法案を可決した。2022年にマクロン大統領が制度の見直しを掲げてから、4年間にわたって続いた議論が決着した。法案の中身やヨーロッパで広がる安楽死の現状、日本の動きなどを5項目で解説する。
「安楽死」と「自殺幇助」の違い
今回、フランスの議会が可決した法案は、「死の援助」と呼ばれる。一般的に、医師らが致死薬を投与して患者を死なせる行為は「積極的安楽死」とされる一方、医師らが用意した致死薬を患者自身が使う仕組みは「自殺幇助」と呼ぶ。本人の意思に沿って延命治療を始めなかったり、中止したりする「尊厳死」は、死を直接もたらす行為ではない。フランスの法律は医師らに用…
フランスでなぜいま法制化するのか
マクロン大統領は2022年の大統領選挙で、終末期医療の見直しを公約に掲げた。国民の間で、苦痛を伴う延命治療よりも、自ら死を選択する権利を求める声が高まっていた。2023年には市民参加の議論が行われ、2024年に法案が提出された。与党や左派の支持を得て、最終的に可決に至った。
誰が対象で、何が争点なのか
法案の対象は、治癒の見込みがない重い疾患に苦しむ成人患者で、明確な意思表示ができることが条件だ。医師による審査や、一定の待機期間が設けられる。争点となったのは、精神疾患や認知症の患者への適用範囲、医療従事者の良心的拒否権の扱いなどだ。最終的に、精神疾患の患者は対象外とされた。
ヨーロッパではどこまで広がっているのか
ヨーロッパでは、オランダやベルギー、ルクセンブルク、スイスなどが既に安楽死や自殺幇助を合法化している。スペインやポルトガルでも近年法制化が進み、ドイツやイタリアでも議論が活発化している。欧州連合(EU)内で、死を選ぶ権利の拡大は確かな潮流となっている。
日本での議論
日本では、安楽死や自殺幇助は刑法上の殺人罪や自殺関与罪に問われる可能性が高い。尊厳死に関しては、2018年に厚生労働省が終末期医療の指針を改訂したが、法制化には至っていない。高齢化が進む中、欧州の動きを参考にした議論が今後さらに活発化するとみられる。



