国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所が南シナ海で中国の「歴史的権利」を退ける判断を下して10年。中国はこの判断への批判を強める一方、日本とフィリピンによる海洋境界画定交渉が国際法に反するとして対抗措置に出ている。その立場に矛盾はないのか、中国南海研究院の呉士存・学術委員会主席に見解を聞いた。
「国際法では永遠に説明できない」
――先日、北京のシンポジウムで南シナ海問題について「国際法では永遠に説明できない」との主張を聞いた。
私はその見解に同意する。南シナ海の問題は領土や海洋境界の争いにとどまらず、政治的問題や域外諸国の地政学的利益も含んでいるからだ。
――国際法順守を主張する中国の立場と矛盾しないか。
明確にしておきたいのは、仲裁裁判所の判断は国際法にのっとったものではなく、政治的な茶番だということだ。当時の国際海洋法裁判所所長は日本人で、仲裁人は欧州人が中心だった。領土問題は国連海洋法条約の管轄範囲を超えており、中国は2006年に海洋境界の画定について仲裁手続きを受け入れないと宣言している。
戦略調整を余儀なく
――中国の海洋戦略に影響はあったか。
確かに戦略を調整せざるを得なくなった。領土紛争に関して中国が提唱していた棚上げや、行動宣言に基づく協議というアプローチを他国が受け入れなくなったからだ。中国は他国が自国の島や岩礁を巡る主張に対抗するため、新たな措置を取っている。



