中国が創薬大国に躍進、米中二極時代へ—日本はドラッグロスに直面
中国が創薬大国に躍進、米中二極時代へ—日本はドラッグロスに直面

世界の創薬が「アメリカ一強」から「米中二極体制」へと移行している。かつて米欧に次ぐ創薬力を誇っていた日本は、その地位を急速に失いつつある。その結果として顕在化しているのが、新薬が日本に届かない「ドラッグロス」だ。これは単なる承認の遅れではなく、グローバルな創薬構造の変化から日本が外れつつあることを示す兆候であり、日本企業にビジネスモデルの再構築を迫っている。

急上昇する中国の存在感

世界の医薬品市場は、2025年に約2兆ドル(約300兆円)規模に達した。国別にみるとアメリカが9200億ドル(約140兆円規模)と世界最大市場であり、中国は1660億ドル(25兆円規模)で2番目だ。かつてアメリカに次ぐ市場規模を誇っていた日本は、13年に中国に、24年にはドイツに抜かれ、現在は約730億ドル(約11兆円)で4位に後退した。人口減少に円安が重なり、グローバルな医薬品市場における日本の存在感は、縮小の一途をたどっている。

発売された新薬の新規有効成分数を見ると、直近5年(21~25年)ではアメリカが270、次いで中国が264、ヨーロッパ5カ国(イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・スペイン)で206、日本は175となっている。ちなみに25年の単年で見ると、トップは中国で62、アメリカが53、ヨーロッパ5カ国が26、日本は31と、中国がトップに躍り出ている。

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開発パイプラインの世界シェア

開発中の新薬候補物質(パイプライン)数で比較すると、企業の本社所在地別に見た世界シェアは、アメリカが35%でトップ、次に中国の32%、ヨーロッパ5カ国で20%だった。日本は約4%にとどまり下降の一途をたどる。09年にわずか2%ほどだった中国のシェアは、16年で約15倍に膨らみ、急速に創薬力を上げてきたことが見て取れる。

「米中対立」下でもライセンス取引は活発

米中対立が激化する中でも、医薬品分野でのライセンス取引は活発だ。中国のバイオテック企業が開発した初期段階の候補物質を、米国の大手製薬企業が導入するケースが増えている。この流れは、中国の創薬力が国際的に認められている証拠であり、日本企業の取り組みの遅れを浮き彫りにしている。

日本のドラッグロス発生は必然

日本の医薬品市場の縮小と創薬力の低下は、新薬が日本で承認・発売されない「ドラッグロス」を引き起こす。特に抗がん剤分野では、開発中の候補の約4割が中国発とされ、日本はこれらの新薬を入手できないリスクが高まっている。日本の患者が最先端の治療を受けられなくなる可能性があり、医療格差の拡大が懸念される。

野村香織氏(福島県立医科大学ふくしま国際医療科学センター准教授)は、「日本がグローバルな創薬エコシステムから取り残されつつある。ドラッグロスは単なる承認遅延ではなく、日本の創薬基盤そのものの危機だ」と指摘する。

日本企業に求められる戦略転換

日本企業は、従来の自前主義から脱却し、中国や他のアジア諸国との協業を積極的に進める必要がある。また、国内市場だけに依存せず、グローバルな臨床試験や販売網の構築が急務だ。政府も、創薬エコシステムの再構築に向けた支援を強化すべきとの声が上がっている。

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