インドネシアの大学教員の約7割が最低賃金未満の待遇で働いている実態が、現地で深刻な問題となっている。大学教員の給与基準が法律で具体的に規定されておらず、大学側が恣意的に給与を決定できるためだ。国公立・私立を問わず、多くの教員が本業に加えて屋台での食品販売などの副業に追われ、生計を立てている。
最低賃金の半分以下で働く教員
西ジャワ州の都市バンドンに住むリスキ・イスティコマさん(35)は、週末になると地元のサッカー場に屋台を出し、ココナツジュースや古着を販売している。さらに、チップを稼ぐために路上で歌うこともある。こうした副業で、多い日には計100万ルピア(約9千円)を稼ぐという。本業はバンドンにある私立大学の芸術教育担当の講師で、国立大学で芸術教育学の修士号を取得し、2017年から務めている。
雇用契約書に記載された基本給は202万ルピア(約1万8千円)で、バンドンの2026年の最低賃金約463万ルピア(約4万2千円)の半分にも満たない。週末の副業がなければ生活は成り立たない。「専門性を生かして教育に携わるのは私の夢だったが、今はこの仕事を選んだことを後悔している」とイスティコマさんは目を潤ませながら語った。
調査で浮き彫りになった苦境
インドネシアの大学教員が直面する苦境は、2026年に実施された複数の調査でも明らかになっている。大学労働組合の調査によると、全国の大学教員の約70%が最低賃金以下の給与で働いており、そのうち約30%は最低賃金の半分以下という。また、約60%の教員が何らかの副業を行っており、その多くが本業の収入を補うために週末や夜間に働いている。
給与の低さは、教員のモチベーションや教育の質にも悪影響を及ぼしている。大学労働組合のスポークスマンは「教員が生活のために副業に追われれば、授業の準備や研究に割く時間が減り、教育の質が低下するのは明らかだ」と指摘する。
給与基準の不透明さが問題
問題の根源は、大学教員の給与基準が法律で明確に定められていないことにある。現行法では、大学が独自に給与を決定できるため、特に私立大学では低賃金が常態化している。国公立大学でも、予算削減の影響で給与が抑制されるケースが多い。
憲法裁判所では現在、大学労働組合が起こした違憲審査が行われており、教員の給与基準を法律で明確に定めるよう求める声が高まっている。審理は2026年6月30日に行われ、判決は数カ月後に下される見通し。
政府の対応と今後の展望
インドネシア政府は、教育予算の増額や教員給与の引き上げを約束しているが、実現には至っていない。教育文化省の高官は「教員の処遇改善は優先課題の一つだが、財政制約の中で即座に解決するのは難しい」と述べている。
一方で、一部の大学では自主的に給与を引き上げる動きも見られる。しかし、多くの教員は依然として厳しい生活を強いられており、副業に依存せざるを得ない状況が続いている。憲法裁判所の判断が、この問題の解決に向けた重要な一歩となることが期待される。



