なぜ日本では、GoogleやAppleのような勢いある企業が生まれないのか。投資家の藤野英人氏は「原因は起業家の能力不足ではない。日本のスタートアップが小粒のまま育たない原因は投資制度にある」と指摘する。東証が進めるグロース市場改革では、上場5年経過後に時価総額100億円未満の企業は市場から退場させるという制度が検討されている。
「時価総額100億円」足切りに強い違和感
藤野氏は、市場の質を高めるという問題意識自体は理解しつつも、この制度に対して強い違和感を持っているという。「この制度をつくろうとしている人たちに、『会社をつくる』ことへの想像力やリスペクトが足りないからです」と述べる。
自分で会社をゼロからつくったことがなく、年商1億円をつくることがどれだけ大変かという現実を知らない人たちが、「時価総額が低い会社はだめだ」「未熟な会社は退場させろ」と簡単に言ってしまうのは乱暴だと指摘。自身も会社をゼロから立ち上げた経験があり、会社をつくることの素晴らしさも大変さも身にしみてわかっていると語る。
レベルが低いのは「審査・投資する側」
藤野氏は、制度をつくる側には挑戦する人へのリスペクトが必要だと強調。しかし現実には、この改革の影響もあって証券会社の引受審査は厳しくなり、「上場はもう少し待ったほうがいい」と主幹事に言われるスタートアップが急増しているという。
この状況が続けば、上場企業数は減り、エンジェル投資家も投資しにくくなると懸念。特に、お金も実績もまだ十分でない人たちに資金が流れなくなってしまうことを強く懸念している。
企業の成長を妨げる「真犯人」
藤野氏は「今起きているのは、かなりおかしな話です。政府はスタートアップを何倍にも増やすと言っているのです。それならなぜ、東証の審査官の数を何倍にも増やしたり、引受証券会社の人員を増やしたりしようとしないのでしょうか」と述べる。審査・監査・投資する側の人数も体制も変えずに、スタートアップの数だけ増やそうというのは矛盾していると指摘する。
グロース市場改革について、「サバンナの象を増やすためには、小さな動物を減らす必要がある」と言う人もいるが、コヨーテやネズミを駆除しても象は増えないと反論。むしろ裾野を広げて上場企業数を増やし、質の悪い会社があれば退場させればいいと提案する。
「日本はスタートアップのレベルが低い」という声に対しては、「私が見る限り、日本の起業家は年々、確実にレベルアップしています。レベルが低いままなのは、審査や投資をする側です」と述べている。



