同じ年齢でも若々しい人と老け込む人の差は、肌の健康を左右する「食べない時間」にあると、米国シンシナティ大学医学部教授の佐々木敦朗氏は指摘する。佐々木氏は著書『3日で変わる からだが目覚める「食べない力」』(講談社)で、空腹時のホルモン環境が老化防止に重要な役割を果たすと解説している。
空腹時のオートファジーが肌を若返らせる
佐々木氏によれば、空腹時やファスティング中には、細胞内の損傷タンパク質や小器官を分解・再利用する「オートファジー」が活性化する。このリサイクル機構は皮膚細胞の新陳代謝に重要で、古くなった細胞成分を除去することで肌の質感改善が期待される。研究では、オートファジーが皮膚老化を抑制する可能性が示唆されている(Eckhart L, et al. Front Cell Dev Biol. 2019; Maloh J, et al. J Clin Med. 2023)。
24時間断食で成長ホルモンが5倍に
成長ホルモンは脳下垂体前葉から分泌され、IGF-1を介して皮膚のコラーゲン合成やヒアルロン酸産生を促進するため、「美容ホルモン」「若返りホルモン」とも呼ばれる。佐々木氏は、高血糖でインスリンが高い状態では成長ホルモンが出にくく、空腹時に増えるグレリンが分泌を促すと説明する。実際、2日間の絶食で24時間当たりの成長ホルモン産生量が約4倍、24時間断食で平均約5倍に増加した報告がある(Hartman ML, et al. J Clin Endocrinol Metab. 1996; Hollstein T, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2022)。
定期的な「食べない時間」が代謝を改善
週に1~2回や月に数日の周期的な断食により、血糖値やインスリン感受性、血圧などの代謝指標が改善した研究結果も紹介されている(Wei M, et al. Sci Transl Med. 2017; Brandhorst S, et al. Nat Commun. 2024)。佐々木氏は「食べない時間をつくること」が成長ホルモン分泌を促し、肌のハリやみずみずしさを維持する環境を整えると強調する。
肌の乾燥や小じわを招く習慣に注意
佐々木氏は、肌の健康を損なう習慣として、過度な糖質摂取や頻繁な間食による高インスリン状態を挙げる。これらは成長ホルモンの分泌を抑制し、コラーゲンやヒアルロン酸の産生を低下させる可能性がある。また、睡眠不足も成長ホルモン分泌の減少につながるため、質の高い睡眠と空腹時間の確保が重要だという。
ファスティングは認知機能低下も抑制
ファスティングの効果は肌だけにとどまらない。動物実験では、断食が認知機能の低下を抑える可能性が示唆されている。佐々木氏は、オートファジーの活性化が神経細胞の健康維持にも寄与するとし、全身の老化防止に「食べない時間」が有効であると結論づけている。
ただし、佐々木氏は「老化防止に関するヒトでの長期・大規模試験はまだ多くない」とし、現時点で言える範囲に限界があることを認めている。それでも、定期的な断食が肌の若返りや代謝改善に有望であることは、複数の研究で示されている。



