日頃感じるモヤモヤを打ち明け、共感しあう場「みんなの保健室」が、鳥取市元町のコミュニティースペースで毎週金曜日に開かれている。主催するのは静岡市から移住してきた理学療法士の鈴木南美さん(24)。鈴木さんは「ぷつりと糸が切れてしまう前に、一息つけるような空間でありたい」と話す。
毎週金曜日、古民家で開催
「人にうまく思いを伝えられない」「会社の人の悪口が嫌になる――」。10日夕方、小学2年生から80歳代までの約10人が、古民家をリノベーションしたコミュニティースペース「不真面目商店」の一室で、ぽつりぽつりと話し始めた。「わかります。私もそういうことあって」と鈴木さんがほほえむと、最初は緊張した面持ちの参加者も、どんどん笑顔になっていった。
理学療法士が予防的視点で
静岡市内の大学で理学療法を学んでいた鈴木さん。学ぶ中で、「理学療法は病気やけがなどになってしまった後の仕事だが、その前の予防的な観点で何か自分にできることはないのか」と考えるようになっていった。そんな時に、知人から不真面目商店で地域イベントの企画などをする「店長インターン」を募集していると紹介された。大学とは違う場所で、新しい経験を積みたいと思っていた時だった。「面白そう」と2024年5月、初めて鳥取を訪れた。
地域の人と一緒に流しそうめんをしたり、小学生が宿題をしにやってきたり。鈴木さんは「見知らぬ地から来たのに、私とおしゃべりしたいって来てくれる人たちがいて。ほんとうに温かい人たちで、一緒にいる時間が楽しかった」と振り返る。
社会的処方とコミュニティナースの影響
5か月の任期を終え、静岡に戻り、再び大学で勉強をしている中で興味を持ったのは、人とのつながりや地域の力で人の健康や幸せを支えていく「社会的処方」という考えや、病院だけでなく、外に出て健康や暮らしの相談にのる「コミュニティナース」の存在だった。
鈴木さんは、店長インターンでしていたように「地域の人たちと関わりながら、医療の枠組みを超えて、別の場所から気にかけてくれる『近所のおせっかいなおばあちゃん』のような存在こそ、自分がしたいことだ」と気づいた。
「大人にだって保健室が必要」
大学卒業後の25年4月、鳥取市の児童発達支援施設に就職した。理学療法士として働きながら、11月から不真面目商店で「みんなの保健室」を始めた。「大人にだって保健室が必要」。そんな思いで、名前をつけた。ルールを三つ設けた。▽会社の代表や誰かの親でもなく「ただの人」として話すこと▽共感こそが、一番の処方箋なので、否定はせず相手を尊重すること▽無理に話さなくてもよく、過ごし方は自由――。
参加者の声「ここが唯一の居場所」
「いま何かモヤモヤはありますか?」そう鈴木さんが問いかけて会が始まる。「不安なこと」ではなく「モヤモヤ」なのは、ポジティブなこともネガティブなことも、どちらでも話してほしいからだ。お菓子を食べながら、ざっくばらんに話していく。参加する40歳代主婦の女性は「家族の転勤でコロナ禍の中、鳥取にやってきた。知り合いもおらず、引きこもり状態だった」というが、「モヤモヤをはき出して、この場所に置いていける感覚。ここが唯一の居場所」と笑みをみせた。
鈴木さんは「孤立しがちな時代に、第三者としてその人の異変に気づける人が必要だと思う。そこから必要な機関につなげてあげられるような居場所でありたい」と話した。



