投資信託には、運用益や元本から投資家に一部を支払う「分配金」が出るものがある。運用しながらお金を受け取れるため、生活費の穴埋めなどに使いやすく、一定の人気がある。ただ、長期で資産を増やしていくには不向きな面もある。
生活費の足しに、若者から高齢者まで人気
8月上旬、資産運用のコンサルティングを手がけるジャパンアセットマネジメント(東京都新宿区)の個別相談ブースでは、「生活費の足しにしたいので分配金のある投資信託を買いたい」といった相談が寄せられていた。
分配金は、投信を持つ投資家に保有する口数に応じて定期的に分配されるお金だ。運用で得られた利益の一部を分配する「普通分配金」と、元本の一部を削って投資家に戻す「元本払戻金(特別分配金)」がある。預金の利息とは異なり、いずれも投信の資産を削って分配している。
商品によって分配金を出すものと出さないものがあり、分配金のあるタイプでは、お金を受け取る「受け取り型」と、受け取るお金を自動的に同じ投信の再投資に使う「再投資型」のコースを選べるものが多い。金額や分配するかどうかは基本的に決算期ごとに資産運用会社が判断している。
分配型のメリットと調査結果
特に、基準価額の一定割合や一定の金額の定期的な分配を掲げるなど、定期的な分配金をアピールする商品は「分配型」と呼ばれ人気となっている。野村アセットマネジメントの酒道亜希金融リテラシーソリューション部長は「定期的に分配金を受け取ることで運用成果を実感しやすく、資産を売らずにお金を使えるため、投資を続けやすいのが分配型のメリットだ」と話す。
資産運用業協会(旧・投資信託協会)が行った2025年の「投資信託に関するアンケート調査」では、投信保有者の29.6%が毎月分配型の投信を保有していると回答した。70歳代では44.1%、20歳代では34.0%に上り、「生活費を補えるため、資産を取り崩す高齢者だけでなく、まとまったお金がない若者の人気も高い」(SBIグローバルアセットマネジメントの朝倉智也社長)という。
投信の決算期は毎月、年4回、年1回などと商品ごとに異なるため、資産運用会社は商品名に「毎月決算」「3か月決算」などと入れて投資を促している。投資家は受け取りたい時期や回数に合わせて商品を選ぶことができる。
長期運用には不向きな面も
ただ、分配型が誰にでも魅力的な商品とは言い切れない。ジャパンアセットマネジメントの城村将也アドバイザーは「若い人など長期運用を考えるのであれば、分配金が出ない投信で資産を増やす方が合理的だ」と話す。
分配金が支払われると、投信の1口あたりの価格を示す基準価額はその分、目減りする。運用資金が減ることで、利益がさらなる利益を生み出す「複利効果」が得にくく、分配金と値上がり益を合わせた将来の運用成果は下がる恐れがある。
投信の保有中に支払う信託報酬も年1.5~2%程度のものが多い。株価指数に連動させるインデックス型の年0.05~0.3%程度と比べて手数料が高く、長期投資には不向きな面もある。
また、十分な利益がないまま、元本を取り崩して分配金を続ける「タコ足」分配にも気をつけたい。元本を取り崩すと、資金が戻ってきただけで運用の原資が減り、運用効率は大きく下がる。国内では10年代半ば頃までタコ足の運用を行う商品が人気だったが、金融庁もこれを問題視し、長期の資産形成を促すNISA(少額投資非課税制度)では、「毎月分配型」の商品を対象外としている。
専門家に聞く、分配型の注意点
もちろん、お金は増やすことだけが目的ではない。手元資金が乏しい場合などに、分配金を生活や余暇などの費用にあてながら運用するのも一つの投資の手段だ。利用する際はメリットとデメリットを理解した上で投資したい。
SBI証券の上原秀信エグゼクティブ・ディレクターによると、分配型は資産を積み上げる段階よりも、退職後などに資産を取り崩す段階で選択肢になりやすい商品だ。投資では資産の一部を売ることに抵抗を感じる人も多く、お金を使いたい場合は分配型で資産を保有しながら定期的にお金を受け取るのも一つの手だ。検討する際は分配金の多さではなく、まずは自分にとって分配金が必要なのかどうかを見極めたいという。
選ぶ際は、運用会社のサイトにある目論見書や運用報告書、証券会社のサイトなどで商品の特性について確認することが必要だ。再投資型か受け取り型を選べない商品もあり、分配金のある設定でも運用を優先して、分配せずに運用を続けている商品も少なくない。目論見書の「分配方針」を見れば、分配についての考え方や金額の決め方などが出ている。運用報告書などには1万口あたり500円といった分配金の過去の推移もあるので参考になる。
また、分配金の原資となったのが運用による「当期の収益」か「当期の収益以外」かも書かれている。毎回、収益以外からの支払いが多い状態だと、運用がうまくいっていない可能性もある。
証券会社のサイトでは、トータルリターンとして値上がりや分配金を合わせた収益の割合も示されている。1年だけでなく、5年などでもしっかりリターンが出ているかを確認したい。投資する際は、どのような投信なのかを理解して購入することを心がけてほしい。



