世界が電気自動車(EV)シフトに沸くなか、中国製ガソリン車の輸出が急拡大している。2023年の中国の自動車輸出台数は491万台に達し、日本を抜いて世界一となった。その内訳を見ると、EVを含む新エネルギー車(NEV)は約120万台であるのに対し、ガソリン車などの従来型車両は約370万台と、実に75%以上を占める。
中国車輸出の内訳と成長要因
中国汽車工業協会のデータによれば、2023年の中国の自動車輸出は前年比57.9%増の491万台。このうちNEVは120万3000台(同77.6%増)で、ガソリン車は370万7000台(同52.4%増)だった。ガソリン車の伸び率こそNEVに劣るものの、絶対数では依然として主力である。
輸出先はロシアが最も多く、約90万台。次いでメキシコ、サウジアラビア、ベルギー、オーストラリアと続く。ロシア向けはウクライナ侵攻後の欧米企業撤退を受け、中国車が空白を埋めた形だ。また、東南アジアや中東、南米など新興国市場での需要も旺盛で、価格競争力の高い中国車がシェアを拡大している。
中国メーカー各社は、ガソリン車の生産を続けながら、並行してEV開発を進める「両輪戦略」を取る。比亜迪(BYD)は2022年にガソリン車の生産を完全停止したが、奇瑞汽車や長城汽車、吉利汽車などは依然としてガソリン車を主力に輸出を伸ばしている。
品質向上と価格競争力の源泉
中国製ガソリン車の品質は近年大幅に向上した。独大手自動車部品メーカーのボッシュやコンチネンタル、独ジーメンスなど、欧州のサプライヤーから最新の部品を調達できることが背景にある。また、中国国内の激しい競争がコスト削減を促し、結果的に低価格を実現している。
さらに、中国政府の輸出促進策も追い風だ。中国商務部は「一帯一路」沿線国向けに自動車輸出を後押ししており、税制優遇や融資支援が行われている。これにより、中国車は新興国市場で日本車や韓国車に対抗できる価格帯を実現している。
日本メーカーへの影響と今後の展望
日本メーカーにとって、中国車のガソリン車輸出拡大は脅威となりつつある。特に東南アジア市場では、トヨタやホンダが長年築いてきたシェアを中国勢が蚕食し始めている。タイでの2023年の中国車販売シェアは約11%に達し、前年の約5%から倍増した。
一方、中国メーカーはガソリン車の技術改良も進める。ターボチャージャーや直噴エンジンなど、燃費性能を高める技術を積極的に採用し、環境規制に対応している。これにより、欧州の排ガス規制「ユーロ7」にも適合可能なモデルを投入しつつある。
自動車アナリストの鈴木宏氏は「中国メーカーはEVだけでなく、ガソリン車でも競争力を高めている。日本メーカーは価格面で劣位に立たされつつあり、差別化戦略が急務だ」と指摘する。
中国のガソリン車戦略の行方
中国政府は2035年までにNEVの販売比率を50%以上に引き上げる目標を掲げるが、ガソリン車の生産を即座にやめるつもりはない。国内市場ではNEVシフトが加速する一方、海外向けにはガソリン車を主力に据え、規模の経済を維持する戦略だ。
しかし、欧州連合(EU)が中国製EVに対する追加関税を検討するなど、貿易摩擦の火種もくすぶる。ガソリン車についても、欧州や米国が排ガス規制を強化すれば、輸出に影響が出る可能性がある。
中国製ガソリン車の輸出拡大は、世界の自動車産業の地図を塗り替える可能性を秘めている。日本メーカーは低価格帯の商品力強化や、アフターサービスでの差別化など、新たな対応を迫られている。



