2025年4月、ドナルド・トランプ米大統領がほぼすべての貿易相手国に対して大幅な追加関税を課すと発表してから約1年数カ月が経過した。日本にとって特に痛手だったのは、自動車に対する関税措置だ。従来の2.5%に加え、さらに25%の追加関税が課される見通しとなり、合計27.5%に達する可能性があった。その後、日本政府の交渉により追加関税は15%に引き下げられたが、代わりに5500億ドル(約82兆円)の対米投資を約束するなど、状況は複雑に推移している。
関税が日本経済に与える影響
関税がかかると、米国内での日本車の価格が上昇し、販売台数が減少するのは避けられない。自動車産業は日本の基幹産業であり、多くの雇用と経済活動を支えている。著者の安藤久史氏(『自動車ビジネスがわかれば日本経済がわかるって本当ですか?』東洋経済新報社)は、自動車関連の従事者はサプライチェーン全体で数百万人に上ると指摘する。関税の影響は単に自動車メーカーだけでなく、部品メーカーや販売店、整備工場など広範囲に及ぶ。
2040~2050年のクルマの姿
長期的には、自動車産業は大きな変革期を迎えている。エネルギーがガソリンから電気に移行し、自動運転技術が実用化されつつある。安藤氏は、2040~2050年には自動車は単なる移動手段ではなく、生活空間や情報端末としての役割を担うと予測する。例えば、自動運転中に車内で仕事や娯楽を楽しむことが当たり前になる可能性がある。
クルマ離れの実態
日本では「クルマ離れ」が叫ばれて久しい。実際、自動車の保有台数は10年で大きく減少している。若年層を中心に運転免許を取得しない人が増え、都市部ではカーシェアリングや公共交通機関の利用が広がっている。しかし、地方では依然として自動車が生活に不可欠であり、地域格差も顕著だ。10年落ちの中古車でも十分に乗れる品質が保たれていることも、新車購入を控える一因となっている。
自動車産業の雇用と経済
自動車産業は、直接雇用だけでなく関連産業も含めると、日本の就業人口の約1割を占めるとされる。部品メーカー、素材メーカー、物流、販売、アフターサービスなど、裾野は広い。関税や電動化による構造変化は、これらの雇用に大きな影響を与える可能性がある。特に、エンジン関連部品の需要が減少する一方で、バッテリーやモーター、ソフトウェアの需要が拡大するため、労働力の再配置が課題となる。
世界情勢とサプライチェーン
トランプ政権の関税政策に加え、地政学的リスクや半導体不足など、サプライチェーンを取り巻く環境は不透明だ。日本企業は米国への投資拡大や生産拠点の分散を進めているが、コスト増加は避けられない。また、中国やEUとの競争も激化しており、日本の自動車産業が優位性を維持するためには、技術革新と国際協調が不可欠である。
まとめ
自動車産業は、関税問題や電動化、自動運転など、複数の課題に直面している。2040~2050年には、クルマの概念自体が変わる可能性がある。日本経済を支える基幹産業として、これらの変化にどう適応していくかが問われている。



