2025年9月16日、自民党本部で開かれた郵政事業に関する特命委員会などの合同役員会。日本郵政と日本郵便の両社長が新経営陣として着任した直後の場で、幹事長(当時)の森山裕(81)は厳しい言葉を投げかけた。「いまの郵便事業は本当に信頼を失っている。そのことをぜひ自覚してほしい」。森山は特命委の委員長も兼ねており、遅れて入室するや否や、この指摘をぶつけた。
不正点呼問題と法改正の関係
この日の会合は、日本郵政グループの新経営陣を紹介するとともに、アルコールチェックなどを省く不正点呼が蔓延した問題について報告する目的で開かれた。議員連盟の会長を務める衆院議員の山口俊一(76)も同席し、「本当に不祥事が止まらない。我々は長年、法改正をやりたくて、苦労して『あそこ』まで来たときにドンとやられた。どこが悪いかをきちんと洗い直したほうがいい」と注文を付けた。
山口の言う「あそこ」とは、改正案を取りまとめて2024年6月に国会提出した経緯を指す。改正案提出直前に不正点呼が発覚し、提出後には行政処分が下る大問題に発展した。この不祥事が改正案の審議に影を落とした。
立憲民主党の壁とキーマンの落選
改正案は公明党、国民民主党との3党共同で提出されたが、最大野党の立憲民主党が審議に応じないことが最大の障壁だった。立憲民主党には改正案に賛同する議員もいたが、党内のキーマンが審議にストップをかけていた。しかし、その後の衆院選でそのキーマンが落選。これにより、立憲民主党の姿勢が軟化し、審議が進むきっかけとなった。
改革派の変心と水面下の駆け引き
自民党内でも、当初は民営化推進派だった議員が「改革派」として変心し、改正案に賛成に回った。郵政民営化法の改正は、多額の公的資金を日本郵便に注入し、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式売却に制限を設ける内容で、郵便局のネットワーク維持を目的としていた。しかし、批判も多く、既得権益を守る時代錯誤の政策だとの声も上がった。
昨年の特集「郵政一家の策謀」の続編として、本記事ではこの1年の水面下の駆け引きを報告する。不正点呼問題、キーマンの落選、改革派の変心――これらの要因が重なり、改正案は成立へと至った。
今後の展望と課題
日本郵政グループは、経営の透明性向上と信頼回復が急務とされる。森山裕は「厳しいことを申し上げて恐縮だが」と前置きしつつ、経営陣に自覚を促した。山口俊一も「どこが悪いかをきちんと洗い直したほうがいい」と指摘。改正法の施行後も、郵便事業の持続可能性が問われている。



