岐阜の山奥スーパー「やまにし」が農林水産大臣賞を受賞した独自戦略
岐阜の山奥スーパーが農林水産大臣賞を受賞した戦略

岐阜県の山奥にあるスーパー「やまにし」が、2023年に農林水産大臣賞を受賞し、注目を集めている。人口減少と高齢化が進む地域で、大手ドラッグストアの進出にも負けず、独自の戦略で生き残りを図る同店の取り組みを紹介する。

4代目店主の西尾真朋さんと妻の夏子さんが夫婦で営むこの店は、かつて大手ドラッグストアが出店した際、存続の危機に直面した。西尾さんは地元商工会の指導員とともに近隣スーパーの特徴をグラフ化して分析。価格帯や品揃え、店舗の特性を比較したところ、多くの店が同じポジションに密集しており、「スーパーやまにし」もその一角にいた。

「同じ土俵で戦っていてはダメだと思いました。週に3回スーパーへ行く人がいるなら、そのうち1回だけでも『何か面白いものがあるかもしれない』と思って来てもらえるような店にしようと考えました」(西尾さん)

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ターゲットは食に関心のある女性、商圏は半径30キロ

ターゲットに据えたのは、「30代から60代の食に関心のある女性」。商圏は半径30キロ、車で30〜40分の中津川市中心部と恵那市、下呂市を想定している。毎日買い物に行くスーパーではなく、少し良いものを探しに行くスーパーを目指したのである。

その象徴的な商品が、自家製のみそとたまりしょうゆだった。もともとは祖母が家庭用に仕込んでいたもので、この地域では珍しい文化ではなかった。しかし、手間がかかるため、自家製みそを仕込む家庭は減少していた。「売ってほしい」という声を受け、倉庫の一角を改装して保健所の許可を取得。商品として販売を始めた。

自家製みそとたまりしょうゆが名物に

国産大豆を使い、1年以上かけて熟成させる昔ながらの製法。効率は悪いが、評判は良かった。ただし、利益はあまり残らなかった。それでも、このみそとたまりしょうゆが店の名物になっていく。さらに、このたまりしょうゆを使った「鶏ちゃん」を商品化したところ、これがヒット。道の駅への卸販売も始まり、店の経営を支える主力商品へと成長した。

2023年には、優良経営食料品小売店等表彰事業で最高賞の農林水産大臣賞を受賞。人口減少が進む地域での独自の店づくりが高く評価された。

大型店に勝とうとは思わない

地方のスーパーを取り巻く環境は年々厳しさを増している。人口減少と高齢化が進み、大型スーパーやドラッグストアは地方へも進出した。かつて地域の暮らしを支えた町のスーパーが姿を消しつつある。農林水産大臣賞を受賞しても、西尾さんは大型店に勝ったとは考えていない。同じ土俵では戦えないと認めたうえで、「食のよろこび」という別の価値を作ったのだ。人口減少時代の地方小売りにおいて、その戦略はむしろ合理的なのかもしれない。地方の小さなスーパーの挑戦は、今も続いている。

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