電気自動車(EV)への移行が加速するなか、ガソリン車向け部品を主力とするサプライヤー企業が深刻な経営危機に直面している。エンジンやトランスミッションなど、ガソリン車に不可欠な部品の需要が急減し、売上高が半減するケースも珍しくない。業界関係者は「このままでは多くの中小部品メーカーが廃業に追い込まれる」と警鐘を鳴らす。
部品点数減少で売上高半減も
ガソリン車の部品点数は約3万点とされるが、EVでは約2万点に減少する。特にエンジンや排気系、燃料系の部品は不要となるため、これらを専門に手掛けてきた企業は事業基盤を失いつつある。実際、ある大手部品メーカーでは、EVシフトの影響で主要取引先からの受注が3年で4割減少し、売上高が半減したという。
こうした状況を受け、経済産業省も2023年に「自動車部品サプライヤー事業転換支援プログラム」を策定。中小企業を中心に、EV向け部品や異業種への転換を後押しする補助金制度を拡充している。しかし、補助金だけでは抜本的な解決にならないとの指摘もある。
生き残りをかけた事業転換の実態
一部のサプライヤーは、EV向けモーターやバッテリー関連部品への生産転換を進めている。例えば、エンジンバルブを手掛けていた企業が、EV用冷却システムの部品製造に乗り出すケースが増えている。しかし、新たな設備投資や技術習得には多額の資金と時間が必要で、すべての企業がスムーズに転換できるわけではない。
また、自動車業界に詳しいアナリストは「ガソリン車部品サプライヤーの多くは、長年培った技術やノウハウを異業種で活かす道を模索すべきだ」と指摘する。実際、ある中小部品メーカーは、金属加工技術を活かして医療機器部品の製造に参入し、新たな収益源を確保している。
業界再編の動きも加速
こうした危機を背景に、業界内での再編も加速している。大手部品メーカーが中小サプライヤーを買収し、EV関連事業を強化する動きが目立つ。一方で、事業継続が困難な企業は、廃業や他社への事業譲渡を余儀なくされている。
自動車産業の地盤沈下は、雇用面でも大きな影響を及ぼしている。ある地方都市では、主要な自動車部品工場の閉鎖により、地域経済が打撃を受け、失業率が上昇した。自治体も企業誘致や雇用創出に奔走しているが、根本的な解決には至っていない。
EVシフトは環境対策として不可避である一方、その影で苦しむサプライヤー企業の存在は、政策立案者や業界関係者が真摯に向き合うべき課題である。生き残りをかけた企業の取り組みと、それを支える支援策の拡充が、今後の自動車産業の持続可能性を左右することになる。



