世界的な電気自動車(EV)への移行が叫ばれる中、ガソリン車の市場が新興国を中心に急成長を遂げている。2024年の世界のガソリン車販売台数は前年比8%増の約8500万台に達し、過去最高を更新した。この数字は、EV販売が同35%増の約1400万台だったのに対し、絶対数では依然としてガソリン車が圧倒的であることを示している。
新興国市場がけん引するガソリン車需要
特にインドや東南アジア、アフリカ諸国での需要が拡大している。インドでは2024年のガソリン車販売が前年比12%増の約450万台となり、中国を抜いて世界第2位の自動車市場に浮上した。背景には、充電インフラの未整備やEV価格の高さ、政府の補助金不足がある。
インド自動車工業会(SIAM)のラジェシュ・メノン会長は「インドではまだ多くの消費者がガソリン車の手頃さと利便性を重視している。EVへの移行は段階的に進むだろう」と述べている。また、インドネシアではガソリン車販売が15%増加し、タイでも10%増と堅調だ。
先進国でもガソリン車需要は根強い
意外なことに、欧米でもガソリン車への需要は完全には衰えていない。米国では2024年のガソリン車販売が前年比3%増の約1200万台。特にピックアップトラックやSUVの大型車種で人気が続いている。欧州連合(EU)でもガソリン車販売は2%増の約1000万台と微増し、特に東欧諸国で成長が見られた。
国際エネルギー機関(IEA)の分析によると、ガソリン車の平均燃費は改善を続けており、CO2排出量削減にも貢献している。IEAの自動車アナリスト、マリア・フェルナンデス氏は「内燃機関の効率化により、ガソリン車の環境負荷は10年前に比べて大幅に低下した。新興国ではEVよりも即効性のある解決策として受け入れられている」と指摘する。
自動車メーカーの戦略変化
この傾向を受け、大手自動車メーカーも戦略の見直しを迫られている。トヨタ自動車は2024年、ガソリン車の新型モデルを10車種以上投入すると発表。同社の豊田章男会長は「全ての地域でEVだけが答えではない。顧客の多様なニーズに応えるため、内燃機関車の開発も継続する」と語った。
一方、フォルクスワーゲンは新興国向けに低価格のガソリン車を投入する計画を発表。BYDなど中国メーカーも、ガソリン車の生産を続けながらEVを拡充するハイブリッド戦略を取っている。
ガソリン車市場の将来展望
専門家は、ガソリン車の需要は少なくとも2030年までは堅調に推移すると予測する。ただし、長期的にはEVの普及や排出規制強化により縮小は避けられない。英調査会社LMCオートモーティブのシニアアナリスト、ジェームズ・カーター氏は「ピークは2024年か2025年だろう。その後は徐々に減少に転じるが、新興国では2040年まで一定の市場が残る」と分析する。
ガソリン車市場の急伸は、EV一辺倒ではない現実を浮き彫りにした。自動車業界は、地域ごとの事情に応じた柔軟な戦略が求められている。



