書店減少に抗う夫婦の挑戦:購入後10年で開く本の魅力を伝える独自戦略
書店減少に抗う夫婦の挑戦:購入後10年で開く本の魅力

全国で書店が減少し続ける中、大阪市西区の書店「モモブックス」を夫婦で営む松井良太さん(40)と桃子さん(41)は、独自の品揃えと著者を招いたイベントを通じて読書の間口を広げる試みを続けている。2人は「本が社会や文化について考える入り口になればうれしい」と語り、居心地の良い場所づくりに力を注いでいる。

イベントで読者と著者をつなぐ

6月最後の日曜日、大阪メトロ九条駅近くの住宅街にある貸しスペースには、熱心な読者約30人が詰めかけた。この日は、「バラバラな世界で共に生きる リチャード・ローティの哲学」を出版した言語哲学者の朱喜哲さんらによるトークショーが開催され、社会の分極化が進む中で「怒り」をテーマにした議論が繰り広げられた。参加者の一人、大阪市西成区の自営業・花岡由起さん(55)は「読書に加え、著者の思いを直接聞くことで、本への理解が深まるのが魅力」と話す。

普段は木造長屋にある書店の2階で、週1回のペースでイベントを開催し、オンラインでも配信している。店舗1階には温かみのある木製の本棚が並び、反戦やジェンダーを扱った硬派な本から、旅行や日常をテーマにした自費出版物「ZINE」まで約1000冊がそろう。

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選書のこだわりとコロナ禍の転機

選書を担当する松井さんの最近の一押しは、京都の焙煎家がコーヒー業界のジェンダー平等をテーマに執筆した「コーヒーは男のもの?」(中村佳太著)。「身近なコーヒーの中にも様々な社会問題が内在していることを教えてくれる一冊」と推薦し、31日にはイベントを企画している。

松井さんは以前、ミナミのライブハウスで働き、音楽だけでなくお笑いから政治まで幅広いトークショーを企画していた。転機は2020年の新型コロナウイルス禍。営業制限でイベントが軒並み中止になり、将来を考えた末に「ライブハウスはチケットが必要だが、誰でも気軽に立ち寄れる本屋を開きたい」とアイデアが浮かんだ。大型書店で約1年間アルバイトしながら開店準備を進め、結婚前から桃子さんと過ごした思い出の場所で、妻の名前にちなんだ店を2023年3月にオープンさせた。

本の魅力と対話を大切に

本の魅力について、松井さんは「自分で時間を決めて、読んだり閉じたりできること」と語る。購入後すぐに読むこともあれば、10年後にページをめくることもあり、自分のペースで楽しめる。レジでの会計時には、客が選んだ本をきっかけにした会話を大切にしている。飲み物も販売しており、国際情勢から日常の出来事まで、コーヒーやジュースを片手に会話が弾むこともある。

「年齢がバラバラな人たちと友達になれたことがうれしい」と松井さん。書店経営を通じて地域の人や常連客との関わりが深まり、九条に住む人々の話を聞き書きでまとめて出版することを目指している。「しんどい思いを抱えた時、『ここに来ると落ち着く』と思ってもらえるような空間にしていきたい」と意気込む。

書店減少の現状

日本出版インフラセンターの調査によると、2025年度末時点の全国の書店数は9993店で、1万店を割り込んだ。ネット書店の普及などで約30年前比で4割程度となっている。大阪府内も2016年度に996店あったが、2025年度は651店に減少。泉北郡(忠岡町)は書店ゼロ地域となり、大阪市此花区、交野市、阪南市、三島郡(島本町)はそれぞれ1店だけとなっている。

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