副業や転職に関する情報があふれる中、現在の勤務先で働き続けたいと考える人もいるだろう。今の会社で自分の価値を高め、生き残っていくための方法のひとつとして注目されるのが「社内起業家(イントレプレナー)」という働き方だ。
転職希望者の実際の転職割合は低下傾向
転職が一般的な選択肢となった一方で、転職を希望する人のすべてが実際に転職しているわけではない。リクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査」によると、前年に転職を希望していた人のうち実際に転職した人の割合は、2020年以降13%前後で横ばいが続いていた。しかし2025年は11.8%となり、2016年の14.5%と比べて2.7ポイント低下している。
転職を希望する人自体は増えているものの、それが実際の転職に結びついているとは限らない。転職したいと考えながらも行動に移さなかったり、思いとどまったりする人もいると考えられる。単純に「転職ブーム一色」とはいえず、現在の会社で働き続けることも有力なキャリアの選択肢のひとつだ。
社内起業家に必要な行動と組織の動かし方
今の会社で働き続けながら自分の価値を高める方法のひとつが「社内起業家」を目指すことだ。社内起業家は既存の企業に所属しながら新規事業の立ち上げなどに取り組む人を指し、既存の組織や経営資源を最大限に活用して新しい価値を生み出し、会社にとって「代わりの利かない存在」になることを目指す。
決められた業務をこなすだけの働き方から一歩踏み出し、経営者の視点を持って組織を動かすことが鍵となる。企業が持つ資金や人材、顧客基盤などを活用しながら小さな仮説検証を繰り返すことが、新規事業を前進させるポイントだ。
ある日突然「社内起業家」を名乗っても社内で認められるわけではない。まずは既存の仕事で小さくても確かな実績を積み、周囲から信頼を得ることが大切だ。そのうえで社内の公募制度や新規事業提案制度を積極的に活用し、既存の業務プロセスにとらわれず顧客の視点に立って課題の解決策を考える姿勢が求められる。
社内でプロジェクトを進めるには上司や同僚などほかのメンバーの協力が不可欠だ。自分のアイデアをわかりやすく伝え、周囲を説得しながら巻き込んでいく必要がある。会社の強みと自分の新しいアイデアを掛け合わせ、独りよがりな提案にならないようにすることも重要で、対話を重ねながら目指す方向について社内の共通認識を少しずつ作っていくことが求められる。
社内起業家に向いている人と注意点
社内起業家に向いているのは、社会が抱えている課題や今後課題になりそうなことを見つける力、困難な課題に取り組むチャレンジ精神と行動力、自分の思いを発信し周囲を巻き込む力、困難があっても諦めず最後までやり抜く力を備えた人だ。
新規事業を考える際にはビジネスチャンスを見つける必要があり、社会や顧客が抱える課題に目を向け、その解決策を考える力や今後の変化を予測する先見性が重要となる。新規事業は当初の想定どおりに進まないことも少なくなく、困難にぶつかっても諦めずに取り組み、最後までやり抜く力が必要だ。また、自分の思いを周囲に伝えて協力を得ながらチームを作り、結果につなげるリーダーシップも求められる。
一方、決断を先延ばしにする、失敗を他人のせいにする、指示を待つ姿勢から抜け出せないといった傾向がある人は、社内起業家として苦労する可能性がある。
社内起業家は単に現在の会社で生き残るためだけの肩書ではない。自ら事業の当事者となり、周囲と協力しながら前に進める姿勢が不可欠だ。転職をしなくても、社内で新しい役割を作り自分のキャリアを広げることはできる。まずは現在の業務で課題を探し、自分にできる小さな改善から始めてみてはいかがだろうか。



