「現金とっぱらい」の現場で、49歳の戸田さん(仮名)は月収約11万円の日払い派遣で生活している。彼は就職氷河期世代の一人であり、生活保護を受けずに自ら稼いだ金で自由を得ている。戸田さんは「人間、何もしない時間が長いと逆にキツくなるんですよ。朝起きてやることがなくて、二度寝して、昼から酒を飲む。そんなダメ人間みたいな生活に飽きてきます。しかも、僕の場合は、腰以外は健康な体なのに、お金がなくて身動きが取れないんです。精神を病んでいて動けない人や、身体的に働けない人なら生活保護が最適解でしょう。僕は少しは動けたので派遣でもいいからやり直そうとなりました。ただ、今の生活に限界がきたら、また生活保護に戻るのも選択肢のひとつです」と語る。
日払い派遣の実態と収入
イベント系の日払い仕事は土日に現場が多いが、来月の仕事があるかどうかはわからない。戸田さんの現在の収入は生活保護とそれほど変わらないが、自ら稼いだお金があれば自由が手に入る。毎日、好きな焼酎を家飲みし、趣味のパソコンでMAD動画を作ることもある。割に合わない仕事や厳しい条件の仕事は断ることができる。ささやかでも、戸田さんには誇るべき生活がある。
正社員への道のり
戸田さんは日払い派遣を続けながらも、正社員になろうとしなかったわけではない。高校卒業時には公務員試験やゲーム会社の就職試験を受け、その後も機会があれば会社に応募を続けていた。「日払い派遣をしながらも面接を受けるなり、応募はしていました。でも、だいたい書類で落ちましたね」と振り返る。
就職氷河期世代の厳しさ
取材中の戸田さんは話し下手な印象はなく、自己分析や課題の言語化もできる。しかし、「そうは言われても、正社員経験がない人間は、成功経験が少ないので、自己評価が低くなりやすいと思います。契約社員どまりだと、自分はあぶれものみたいな意識があります。正社員になることは、例えるなら大学合格です。世間に認められているじゃないですか」と語る。
著者も戸田さんと同世代の氷河期世代であり、大学卒業後、就職先が決まらなかった経験を持つ。戸田さんは「そうなんです。新卒カードを失って、その後も景気は回復しませんでした。人数は多くて、切り捨てられた世代です。どんな年齢でもやり直しはきくといいますが、せめて30代ですよ。49歳なんて、仕事でも結婚でも、厳しさしかないです。実際、この歳では詰んでいます」と述べる。
結婚と将来
結婚の話題が出ると、戸田さんは学生のころ女性が苦手だったと明かす。現在も独身であり、将来については「今の生活に限界がきたら、また生活保護に戻るのも選択肢」と冷静に語る。



