「現金とっぱらい」の現場で、49歳男性が「口座残高は209円ですよ。見ますか?」と話す。就職氷河期世代のこの男性、戸田さん(仮名)は月収11万円でも生活保護を受けないという。その理由と壮絶な半生に迫る。
正社員になれなかった氷河期世代
戸田さんは昭和51年生まれの49歳。就職氷河期の真っただ中に社会人となり、正社員としての職歴は一度もない。「正社員になったことがないと、まともな職歴になりません。生活のために目の前の仕事をいろいろやりました」と振り返る。
最初に勤めたゲームセンターでは、店長のセクハラ事件や飲酒運転事故などがあり退職。その後、新宿のゲームセンターで1年ほど働いたが、正社員にはなれなかった。「もしゲームセンターの正社員になっていたら今でも勤めていたと思います。ただ、他の会社をわざわざ受けて正社員になろうとは思わなかったんです」と語る。
転々とした職歴と精神的追い詰め
ゲームセンターを辞めた後、家電量販店でインターネットプロバイダー営業の契約社員として働いたが、3カ月で退職。「いきなり店舗に1人だけで行かされました。最初だけ契約獲得専門の応援部隊が入り、強引に契約を取っていったんですが、大量のクレームは残った僕に全部来る。店舗の副店長はぶち切れ、いくつかの店舗を回っている上司は全然助けてくれない。精神的に追い詰められて、3カ月くらいで辞めました」と説明する。
その後は派遣会社に登録し、イベント会場設営や受付、印刷所作業、マンション管理人、警備員、新聞拡張員など様々な仕事を転々とした。新聞拡張員の仕事は完全歩合制で1件3000円。寮費が月4万円かかる中、月に5件しか契約が取れず収入は1万5000円で完全な赤字だった。「相手がドアを5センチ開けたら、そこに足を突っ込んで、玄関先で怒鳴るという、無茶苦茶な営業をしているようでした」と当時の上司を語る。
福島の除染作業へ
新聞拡張員を辞めた後、住む場所も金もなくなり、35歳ぐらいで知人のつてを頼り福島の除染作業に就いた。「追い詰められたので、知り合いのつてを頼り、35歳ぐらいで福島の除染作業に就くことになったのです」と語る。現在はイベント系の日払い仕事を主としており、土日が現場になることが多いが、来月仕事があるかどうかはわからない不安定な状況だ。
戸田さんは月収11万円でも生活保護を受けない理由について、具体的な説明はなかったが、自身のプライドや制度への不信感などが背景にあるとみられる。



