福島県の山間部で、セシウムに汚染された土を熊手で削り袋に詰める作業、あるいは道路を高圧水で洗い流す除染作業に従事していた49歳の男性・戸田正和さん(仮名)。寮費は朝晩の食事付きで月2万円と格安だったが、日給は1万2000円から1万5000円程度。当時は大きな収入に感じられたという。
除染現場の過酷な実態
戸田さんは3カ月ほど働いた後、別の除染業者に移った。しかし、朝は早く現場は遠く、旅館の一室に男3人で寝泊まりする生活。さらに親方が毎晩のようにキャバクラに呼び出し、陰キャ気質の戸田さんには辛い環境だった。強制的に行かされ、割り勘でお金を取られることもあった。同僚の態度に注意したところ、職場の雰囲気が悪化し、関東へ戻る決意を固めた。
腰の古傷と生活保護への道
戸田さんは25歳でギックリ腰を経験し、腰椎ヘルニアを患っていた。除染作業での肉体酷使が古傷を悪化させ、フルタイム勤務が困難に。30代半ばから3年間、生活保護を受給することになった。
「役所の担当には『この年齢なら働けるんじゃないですか』と最初は止められました。でも、腰が痛くて仕事に行けない。『申請します』と伝えて書類を出すと通りました」と振り返る。
生活保護の実情と制約
生活保護費は家賃込みで月11万円程度。家賃3万9000円を差し引くと、生活費は7万円ほど。医療費は医療券で無料だったが、物価高騰で厳しい状況だ。また、親族からの援助の有無を確認され、車や原付は原則保有不可。働いて得た収入からは一定額が差し引かれる。
戸田さんは現在、生活保護を脱却し、イベント系の日払い仕事を中心に月収約11万円で暮らす。土日が現場になることが多く、来月の仕事が保証されているわけではない。それでも「暮らしに不安はあるが、家賃を払わなきゃいけないので、派遣でも日払いでもやれるだけのことはしている」と語る。
生活保護を受けない理由
「生活保護はきついですよ。自治体にもよりますが、僕が受けていたときは家賃込みで11万円ぐらいでした。今の収入とあまり変わらない。でも、保護に頼らずにやっていきたい」と戸田さん。就職氷河期世代として厳しい労働環境を経験しながらも、自立を選んだ理由には、保護の制約や精神的な負担があるようだ。
現在の収入は生活保護費とほぼ同水準だが、戸田さんは「何もしない時間こそがキツい」と語り、働くことの意義を感じている。日雇い仕事の不安定さと向き合いながら、彼は今日も現場に向かう。



