ワンキャリア取締役の北野唯我氏は、著書『仕事を好きになる技術』(朝日新聞出版)において、人間の幸福度を決定づける要因は年収や学歴ではなく、「選択」にあると主張する。2万人を対象とした実証研究の結果、自分で選択しているという感覚が幸福度に大きく影響することが明らかになった。
「ホワイト企業」でも病む若手の本音
北野氏は、20代から30代のビジネスパーソンからキャリア相談を受ける機会が多い。多くの相談者は真面目で優秀であり、無断欠勤をするわけでもなく、与えられた業務を期限通りにこなす。しかし、福利厚生の整ったいわゆる「ホワイト企業」に勤める若手から、「今の仕事がどうしても好きになれない」「毎日が消化試合のようだ」といった相談を受けることが多いという。彼らの瞳は冷めており、鬱屈としたモヤモヤを抱えている様子が伝わってくる。
「ぬるい絶望」の正体
多くの人は、仕事がつまらない原因を「配属ガチャに外れた」「ルーティン業務が合わない」「上司が理解してくれない」など、環境や適性に求める。しかし北野氏は、これらは表面的な症状に過ぎず、本質的な原因は別にあると断言する。最大の理由は、仕事の業務内容そのものではなく、「自分には選択肢がない」という状態、あるいは「自分で選択肢を決められていない」という状態が慢性的に存在することだ。正確には、「自分には選択肢がない」と認知していることが問題なのだ。
研究が示す「選択」の重要性
北野氏は、著書の中で「人間の幸福度」に関する研究を紹介している。研究によれば、人は自分で選択できる状況にあるときに高い幸福度を感じる。逆に、選択肢がなく強制された状況では、たとえ環境が恵まれていても不満や無気力に陥りやすい。これは、年収や学歴、家庭環境といった外的要因よりも、内的な選択の感覚が幸福に直結することを示している。
自分で舵を握るために
北野氏は、仕事へのモチベーションを取り戻すためには、自分自身が「自分の仕事の舵」を握ることが重要だと説く。たとえ小さなことでも、自分で選択し決定する機会を増やすことで、仕事に対する主体性が生まれ、幸福度が向上するという。逆に、すべてを他人や環境のせいにしている限り、ぬるま湯のような虚無感から抜け出すことは難しい。
同書では、具体的な方法として、日々の業務の中で自分で決められる範囲を意識的に広げることや、キャリアの選択肢を増やすための行動を促している。北野氏は「仕事を好きになる技術」を身につけることで、誰でも幸福度を高めることができると結論づけている。



