プルデンシャル生命保険をめぐる長年の金銭授受や違法勧誘問題に対し、外部弁護士による調査報告書が公表され、メディアや有識者による分析が相次いでいる。報告書が示した再発防止策も、最低保証料の導入や契約後の顧客対応の評価引き上げ、営業推進と管理の分離、営業担当者と顧客の関係が閉鎖的にならない仕組みづくりなど、論理的に理解できるものだった。
「過度な成果主義」と「共犯構造」の指摘
「過度な成果主義(フルコミッション制)の弊害だ」「部下が悪ければ上司ももうかる仕組みゆえに、マネジャーが不正を黙認する『共犯構造』ができていた」「ガバナンスやコンプライアンス監査の形骸化だ」といった声が上がっている。どれもこれも、ごもっともな分析である。
制度では防げない「人」の心理的メカニズム
しかし、問題の本質はそれだけだろうか。どんなに「制度」を導入しようとも、どんなに「仕組み」を埋め込もうとも、その中にいるのは「人」である。生身の人間は、ときに論理を超えた行動に走る。どんなにハード面・ソフト面を整えようとも、番の目をいとも簡単に掻い潜ってしまうのが「人」である。
今回の事案に限らず、これまでも不祥事や事後が起きるたびに、私たちはハード面・ソフト面からさまざまな防止策を論じてきた。しかし、歴史が証明してきたのは「どれほど仕組みを固めようとも、人がそこにいる限り想定外は起こる」という残念な真実だった。
そこで今回は、制度論の先にスポットを当て、高い成果を求められるエリート組織の「心の動き」と、彼らが陥りがちな陥穽について、筆者なりの考察を述べてみたい。
「正しさ」がもたらす抵抗心理
プルデンシャル生命保険は「選ばれたプロフェッショナルによるライフプランニング」という高い理念を掲げ、高度な採用と研修システムを誇っていた。しかし、人は「正しくあれ!」と強制されればされるほど、その正しさに窮屈さを覚え、心理的な逃げ場を失っていく。そして、その正しさとは逆方向に歩きたくなる。「心理的リアクタンス」(抵抗心理)というメカニズムである。
例えば『ロミオとジュリエット』の物語もこの構造である。そして、抵抗心理に過度なノルマやプレッシャーが重なったときに「正規のルールから外れた裏技」や「一線を越えた不正」への心理的ハードルが個人的に下がってしまうのである。