全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)は14日、東京都内のホテルで記者懇談会を開催し、NHKのBSチャンネル統合や支出削減計画がテレビ制作会社に深刻な影響を及ぼしていると警告した。6月に就任した松葉直彦理事長(テレビマンユニオン取締役待遇エグゼクティブプロデューサー)は「多くの会社にとって、倒産が目の前に迫っているのではないか」と強い危機感を表明した。
NHK減波と支出削減の影響
NHKは2023年12月にBSチャンネルを一本化。ATPが会員社を対象に実施した経営情報アンケートでは、NHKと取引がある企業の半数以上が「NHK減波の影響がある」と回答した。さらにNHKは2027年度の支出を2023年度比で1,000億円削減する計画を掲げており、井上啓子副理事長(クリエイティブネクサス社長)は、アンケートに寄せられた声として「継続して制作していた番組が減り、売り上げが大幅に落ち込んだ」「明らかに発注本数や予算が減っている」「予算のかかる番組は減らされる傾向にある」といった意見を紹介した。
特集番組の企画募集は行われているものの、制作会社からの提案が以前に比べて通りにくくなっているとの声も多く寄せられた。井上副理事長は、このアンケートが2024年度の実績を反映したものであると指摘し、「私の肌感覚でいうと、現在はもっと深刻になっている。次回の経営情報アンケートでは、さらに深刻な状況が予測される」と述べた。
小規模制作会社への打撃
特に影響が大きいのが、十分な内部留保を持たない小規模な制作会社だ。松葉理事長は「そういう会社は、番組が1つなくなるだけでもかなり大変です。この間のATPの会議でも、『いつ潰れてもおかしくない』という話をする会社がありました。多くの会社にとって、倒産が目の前に迫っているのではないかと思っています」と危機感をあらわにした。
一方で、受信料収入が減少する中でNHKが制作費を削らざるを得ない事情にも理解を示しつつ、井上副理事長は「クリエイターを育てていくことは絶対に必要です。取材力、制作力がなくなってしまうと、本当に厳しい。少しでも制作費を上げ、クリエイターの機会を増やしていただくことが、差し迫った重要な問題だと思っています」と述べ、放送文化や取材・制作の力を次世代へ継承する必要性を訴えた。
テレビ局依存からの脱却と新たな経済圏
伊藤慎一理事(シオン会長兼社長)は、制作費をめぐる厳しい状況はNHKに限ったものではないと説明。ATPが経営情報アンケートを公表する目的について、「このままテレビ局だけに依存して経営していったとき、5年後、10年後にどうなるのか。それを制作会社にも訴えていきたいという意味があります」と強調した。
アンケート結果によると、売上に占める「配信」の割合は2022年度の4.6%から2024年度には8.1%に上昇した。一方、NHKや民放地上波、BS・CSを合わせた放送関連の割合は74.9%から70.4%に低下。伊藤理事は「我々としてもクリエイターの新しい経済圏を拡張していくことを模索しながら、制作会社が今後生きていくためのメッセージでもあると思っています」と語った。
ATPは新たな経済圏への方策の一つとして「海外展開推進室」を設置。総務省が2033年までに放送・配信コンテンツの海外売上を2,500億円規模へ拡大する方針を打ち出す中で、会員社の国際展開支援を強化する。海外展開推進座長の沼田通嗣理事(テレパック取締役)は「これまでは国内の制作者と競い合ってきましたが、今は海外の制作者と競い合う時代なので、より制作力の強化と海外のビジネス展開推進に取り組んでいきたいと思います」と意欲を示している。



