満腹でござる倫太郎食日記第50回:江戸の大店と現金商いの知恵
満腹でござる倫太郎食日記第50回:江戸の大店

「なんといってもお店の間口三十六間(約六十五メートル)、江戸でも屈指の大店中の大店でございますから」

度肝を抜かれるとはこのことだ。藩士長屋がいくつ並ぶことか。母上も清乃も、そのような店で反物を買えというのか。というより、女子はなぜそうした情報に聡いのであろう。

時蔵の説明に驚く倫太郎

「やはり、その、品物の値も張るのであろう? そのような大店であれば」と倫太郎が尋ねると、時蔵は笑みを見せて答えた。

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「いえ、現金掛け値なしという商売で当たりを取った店でございますので、むしろお安いかと存じますよ。つけ払いではなく、その場での支払いですから、銭が必要になりますけどねえ」

「なるほどそうか」倫太郎はわかったような顔をして頷いた。つけ払いだと利息が上乗せされるが、三井越後屋では現金払いだから、それがない。そのため、他店よりも安いことになる。

江戸の商いの現実

桶を空にした棒手振りが横を通り過ぎていく。顔が綻んで見えたのは、すべて売り切れたからだろう。大きな商いでも、小さな商いでも、みな必死だ。いずれもこの江戸で生き残るためだ。

あらゆる品、あらゆる食い物が集まる。しのぎを削る。この町の途方もない大きさに驚嘆しつつも、倫太郎はどこかチグハグさを感じていた。

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