元外資系投資銀行マンで年収1100万円を捨て、刺しゅう屋を始めた実業家の田中優輝氏。SNSで動画が300万回再生されるほどの注目を集めたが、ある時点で個人口座の残高は2158円だった。しかし、意外な「ヘソクリ」が窮地を救ったという。
「帰りを待つわんこ」がバズって起きたこと
田中氏は『東大卒、年収1100万をやめて刺しゅうをはじめたワケ 冷めたまま働きつづける前に』(世界文化社)を出版。その中で、刺しゅう作品「帰りを待つわんこ」の動画が拡散された翌朝、フォロワー数が大きく増え、注文が積み上がり、コメントが止まらなかったと振り返る。
その時の感情について田中氏は「爆発的な喜びかというと、違いました。安心が、8割くらい」と述べている。回るだろうと思っていたが、実際に回るかどうかは出してみるまでわからず、その答えがようやく返ってきたという感覚だったという。残り2割は「怖さ」で、ストーリーで集めたフォロワーが次の作品で離れるかもしれないという不安があったと語る。
PayPayが止まった8月と残高2158円
田中氏は、PayPayが停止した8月のある日、個人口座の残高が2158円だったことを明かしている。しかし、その後の意外な「ヘソクリ」が事業継続の支えとなった。具体的なヘソクリの内容は記事内で詳述されているが、数字よりも強い仕事の「手応え」を感じることで、ミシンの前に座り続ける理由を見出したという。
数字よりも強い仕事の「手応え」
田中氏は、今の仕事に手応えがないと感じる場合、それは数字の問題ではなく、自分の手から誰かの生活へ何かが届いているかどうかが見えていないからかもしれないと指摘する。刺しゅうとアパレルの市場を長年見てきた中で、かわいい動物やきれいな花、トレンドに沿った服はすでに多くあるが、「ここは何かが違う」と立ち止まらせる商品やブランドは少ないと考えた。
そこで、スポーツジム市場でライザップが「結果にコミットする」と打ち出して市場を変えたように、田中氏は「世界的なブランドを私が作る」というストーリーごと売る戦略をとった。商品そのものに、飼い主の心を動かす犬のストーリーを込めることで、心が動くのは飼い主が見ていない間に犬が何をしているか、という点に着目したという。



