レアアース採掘の裏で増大するトリウム副産物
レアアース(希土類)の世界的な需要拡大に伴い、その採掘・製錬過程で副生する放射性元素トリウムの取り扱いが国際的な課題として浮上している。特に、グリーンランドやオーストラリアなどで新たな鉱床開発が進む中、トリウムの環境リスクと資源としての可能性の間で、各国が難しい判断を迫られている。
アメリカのMPマテリアルズが拠点とするカリフォルニア州マウンテンパス鉱山は、主成分がバストネサイトであり、トリウム含有率は比較的低い。一方、オーストラリアのライナスがマレーシアで製錬しているのは、西オーストラリア州マウントウェルドで採掘されたモナザイトだが、これは風化モナザイトであり、インドなどの未風化の砂鉱床由来のモナザイトに比べてトリウム含有率が低い。それでも、マウンテンパスのバストネサイトと比べると数倍から十倍近く高いトリウム含有率となる。
グリーンランドの巨大鉱床とトリウム含有率の実態
冒頭に触れたグリーンランドでは、南部のクバネフィヨルドに巨大鉱床が確認されている。ここの鉱物はバストネサイトやモナザイトとは異なり、「イルリサック・インバジョン」と呼ばれる非常に珍しいアルカリ火成岩で、高い含有率でトリウムを含んでいる。インドのモナザイトではレアアースを採取すると約15%の比率でトリウムが発生するが、中国のバイヤンオボでは約2%、米マウンテンパスでは0.5%、豪マウントウェルドでは1%強であるのに対し、グリーンランドのクバネフィヨルドでは約8%に達する。
このため、上の図でグリーンランドのレアアース生産量がアメリカやオーストラリアに比べて大きくないにもかかわらず、下の図でグリーンランドのトリウム蓄積量が先行する両国と比べて大きくなるのは、このような鉱物の特性の違いによる。グリーンランド住民が懸念するトリウムによる環境汚染の可能性に対して、日本はどのように答えを出すのか。
日本は「使うだけ」の国でよいのか
日本はレアアースの主要輸入国であり、その過程でトリウムを副産物として受け入れているが、トリウム自体の活用はほとんど進んでいない。トリウムは核燃料としての可能性が指摘されながらも、実用化には至っていない。一方で、放射性廃棄物としての管理コストや環境リスクは無視できない。
トリウム熔融塩国際フォーラム理事の亀井敬史氏は、「日本はトリウムを単に廃棄物として扱うのではなく、国家備蓄の対象として戦略的に管理すべきだ」と指摘する。同氏は、トリウムが将来のエネルギー資源として活用される可能性に備え、備蓄と管理の枠組みを構築する必要性を訴えている。
国家備蓄論の浮上と今後の課題
レアアースの安定確保とトリウムの適切な管理を両立させるため、日本では国家備蓄論が浮上している。具体的には、レアアース製錬時に発生するトリウムを分離・貯蔵し、将来的な利用に備える案が検討されている。しかし、貯蔵場所の確保やコスト、住民の理解など課題は多い。
グリーンランドの鉱山開発が進むにつれ、日本としてもトリウム問題に正面から向き合う時期に来ている。単なる廃棄物処理ではなく、資源としての可能性も視野に入れた国家戦略が求められる。



