組織を壊す「功労者だから仕方ない」の罠 ブリリアント・ジャークが許され続ける心理
組織を壊す「功労者だから仕方ない」の罠

「優秀だけど嫌な奴」――なぜ私たちは彼らを「仕方がない」と受け入れてしまうのか。作家でワークスタイル・組織開発専門家の沢渡あまね氏と、ビジネスリサーチラボ代表取締役の伊達洋駆氏が、その心理メカニズムを解き明かす。

「功労者だから仕方ない」という免罪符

本来、組織における信頼は、リーダーが新しい提案や変革を推進するために使われるべきものだ。「普段は堅実な彼が言うのだから、この突飛なアイデアも試してみよう」「彼女の頼みなら、多少無理をしてでも協力しよう」――こうした信頼は、イノベーションのための変革のライセンスとも言える、組織を前進させる重要な資源である。

しかし、ブリリアント・ジャークはこの信頼を真逆の目的で悪用する。彼らは圧倒的な仕事の成果を出すことで大量の信頼ポイントを稼ぎ、そのポイントを未来の変革ではなく、現在の自分の地位や聖域を守るための保身や、ハラスメントの免罪符として浪費するのだ。

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ポイント制の悪循環

「私はこれだけ会社に金を稼がせているんだ。少しくらい遅刻しても、会議中に居眠りしても、部下にキツく当たっても文句はないだろう」――彼らは無意識のうちに(あるいは意識的に)この交換取引を行っている。周囲もまた、無意識のうちにこのポイント制を受け入れてしまう。「あの人は昔から会社を支えてきた功労者だから、多少口が悪くても仕方ない」「彼の技術力は余人に代えがたいから、服務規程を守らなくても目をつぶろう」――そうやって、彼らの有害な振る舞いをポイントの範囲内として処理してしまう。

過去の貢献(ブリリアント)が現在の加害(ジャーク)を相殺する。この計算式が組織内で成立している限り、彼らは反省することなく、ポイントを消費しながら有害な行動を繰り返す。「成果さえ出せば、他はすべて許される」という誤った学習が強化され続けるのだ。

ハロー効果が生む評価エラー

もう一つのメカニズムは「ハロー効果」である。これは、ある対象を評価する際、目立ちやすい特徴(後光)に引きずられて、他の特徴まで実際以上に高く(あるいは低く)評価してしまう認知バイアスだ。ブリリアント・ジャークがまとう後光は、その卓越した実務能力や成果、あるいは自信満々な態度や弁舌の巧みさである。

例えば、営業成績が突出している社員がいるとする。彼が遅刻や暴言を繰り返しても、「これだけ営業成績がよいのだから」という理由で見逃されがちだ。しかし、この評価の歪みは組織全体の士気を低下させ、結果的に長期的なパフォーマンスを損なうことになる。

組織が取るべき対策

ブリリアント・ジャークの問題は、個人の性格だけに起因するものではない。組織の評価システムや文化が、彼らの行動を許容し、むしろ強化している側面が大きい。対策として、成果だけでなくプロセスや行動規範を評価に組み込むこと、匿名のフィードバック制度を導入すること、リーダーシップ研修で心理的安全性を重視することなどが有効とされる。

重要なのは、「功労者だから仕方ない」という思考の罠から脱却することだ。過去の功績は評価するが、現在の有害な行動は別個に扱い、是正を求める姿勢が組織に求められている。

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