電子部品大手の太陽誘電の株価が急騰している。1年前と比べて株価は約8倍に跳ね上がり、時価総額は拡大の一途をたどる。背景には、AIサーバー向けに不可欠な電子部品であるMLCC(積層セラミックコンデンサー)への需要急増がある。同社はMLCCで世界シェア3位を誇り、AIサーバーの高性能化・量産化に伴う需要を取り込んでいる。
工場稼働率は95%に上昇、AIサーバー向けが勝ち筋に
太陽誘電の佐瀬克也社長は7月2日、メディアの合同取材に応じ、現在の事業状況と今後の戦略を説明した。同社の工場稼働率は現在95%に達しており、ほぼフル生産状態にある。これは主にAIサーバー向けMLCCの需要が想定を上回るペースで拡大しているためだ。
太陽誘電は2030年度までの中期経営計画を策定し、従来スマートフォンなどの民生機器中心だった事業ポートフォリオを大きく転換する方針を打ち出している。具体的には、AIサーバーなどの情報インフラ・産業機器と自動車向け売上高の比率を、2020年度の43%から2030年度には60%へと引き上げる計画だ。
PER約140倍の株価水準、社長「経営計画を確実に実行」
現在の太陽誘電のPER(株価収益率)は約140倍、PBR(株価純資産倍率)は7倍以上と、市場の期待が大きく織り込まれた水準にある。この株価評価について佐瀬社長は「コメントできない。業績成長への期待が非常に高く織り込まれており、経営計画を確実に実行していかなければいけないと考えている」と述べ、過熱感を認めつつも、計画達成への決意を示した。
AIサーバー向けMLCCの需要見通しについて、同社の中計では2030年までに32%の伸びを見込んでいる。しかし足元ではそれを上回るペースで拡大しており、今期だけで事業計画上は前年比80%増の成長を見込む。佐瀬社長は「来年くらいまでは今年と同程度の伸びを見込んでいるが、その先は読めていない。顧客から数字はもらっているが、その精度は対外的に示すレベルではない」と説明し、中長期的な需要の不透明感にも言及した。
MLCC価格急騰の可能性は?
半導体メモリーのようにMLCCの価格が急騰する可能性について、佐瀬社長は明言を避けたが、需給が逼迫している現状を踏まえると、価格動向は引き続き注目される。太陽誘電は、高付加価値品へのシフトと生産効率の向上により、収益力を高める戦略を描く。
同社の株価上昇は、AI投資の拡大を背景にした構造的な需要変化を反映している。AIサーバー1台に搭載されるMLCCの数は従来サーバーの数倍に及ぶとされ、需要の急増は一時的なものではないとの見方が強い。太陽誘電が中計で掲げるポートフォリオ転換が実現すれば、さらなる成長が期待される。



