SBIグループが掲げる「第4のメガバンク構想」を巡り、地方銀行の間で経営支配への警戒感とSBIの力を借りたい焦りが交錯している。SBIはこれまでに小中規模の地銀10行に資本を投入してきたが、昨年末から提携先に対するスタンスを強硬に転換。投じた資本の果実を回収するフェーズに入ったとされる。
SBIが求める3つの条件と筑邦銀行の拒否
SBIが提携地銀に求める条件は三つ。①次世代バンキングシステム(勘定系システム)の導入、②出資比率の引き上げ、③取締役の派遣である。これらを事実上の「踏み絵」として突きつけ、拒否すれば提携解消も辞さない姿勢を示している。
その象徴的な事例が、福岡県久留米市に本店を置く筑邦銀行との提携解消だ。2025年12月、SBIは筑邦銀行に対し、既に提案済みのシステム導入に加え、出資比率引き上げと取締役派遣を要請。しかし筑邦銀行が拒否したため、SBIは「互恵関係を築けない」として資本業務提携を早期に解消した。さらに、金融商品仲介の「SBIマネープラザ」との共同店舗3店を2026年4月30日に閉鎖し、企業型確定拠出年金の新規受け付けも終了。筑邦銀行は代替として5月13日に岡三証券と業務委託契約を結ばざるを得なくなった。
預金流出が地銀をSBI依存に追い込む
地銀がSBIに依存せざるを得ない背景には、厳しい経営環境がある。特に預金流出が深刻で、SBIのネット銀行などに資金が流れる中、地銀はSBIの提供する次世代バンキングシステムや販路に頼らざるを得ない。SBIの北尾吉孝社長は決算説明会で「投資効果が見えないと資本業務提携は継続できない」と牽制。提携地銀は条件を受け入れなければ、筑邦銀行のように提携解消のリスクに直面する。
一方で、SBIの傘下に入ることへの警戒感も根強い。出資比率引き上げや取締役派遣は、経営支配の強化につながると懸念されている。地銀の間では「SBIに飲み込まれるくらいなら、自力で生き残る道を模索すべきだ」という声もあるが、現実にはSBIなしでは競争力を維持できないジレンマを抱えている。
次世代バンキングシステムが切り札に
SBIが提供する次世代バンキングシステムは、地銀にとってコスト削減や業務効率化の切り札とされる。しかし、システム導入は長期的なロックイン効果をもたらし、SBIへの依存度を一層高める。既に複数の地銀が導入を検討しているが、導入後の主導権を巡ってSBIとの交渉が続いている。
今回の筑邦銀行の事例は、他の提携地銀に衝撃を与えた。ある地銀幹部は「SBIの要求をのむか、それとも提携解消のリスクを取るか、究極の選択を迫られている」と語る。SBIの「第4のメガバンク構想」は、地銀業界の再編を加速させる可能性がある。
地銀の生き残り戦略とSBIの真意
SBIは、提携を通じて地銀のネットワークを活用し、個人・法人顧客へのリーチを拡大したい考えだ。一方、地銀はSBIの資本とシステムを活用しながらも、経営の独立性を維持する手段を模索している。しかし、SBIの要求が強まるにつれ、地銀の選択肢は狭まっている。
専門家は「SBIの戦略は、地銀を実質的な子会社化し、自らのプラットフォームに組み込むことにある」と指摘する。地銀がどこまで抵抗できるか、今後の動向が注目される。



