水俣に勝った八代のモールも廃墟化が進行
水俣市はチッソの前身である日本窒素肥料の工場進出を機に、農漁村から企業城下町へと変貌して発展した街である。西側に八代海、南側に丘陵地があることから地理的に分断され、独立した商圏が形成されていた。
しかし、1965年に国道3号の改良工事が完成し、水俣市の商圏に変化が生じた。道路整備により自動車での移動が容易になり、消費者の行動範囲が拡大したのである。その結果、より大型の商業施設がある八代市へと買い物客が流出し、水俣の商店街は衰退の一途をたどった。
ところが、八代市のモールもまた、より巨大な競合に飲み込まれようとしている。その象徴が「イオン八代ショッピングセンター」だ。かつては地域の核として賑わったこの施設も、今ではフードコートが全滅し、専門店エリアにも空き区画が目立つ廃墟と化している。
より大型のゆめタウンに太刀打ちできず
八代市には、イオンよりもはるかに大規模な「ゆめタウン八代」が存在する。ゆめタウンはイオンの約2倍の売り場面積を誇り、テナント数も多く、駐車場も広い。消費者はより多くの選択肢と快適なショッピング環境を求めて、自然とゆめタウンへ流れる。
イオン八代は、ゆめタウンに対抗するために改装やテナントの入れ替えを試みたが、根本的な規模の差は埋められなかった。専門店エリアの空き区画は増え、フードコートは撤退が相次ぎ、現在では営業している飲食店は一軒もない。BGMだけが虚しく響く空間と化している。
ショッピングセンター研究家の坪川うた氏は、「モールは弱肉強食の世界。規模で劣る施設は、より大型の競合が近隣にできると瞬時に衰退する」と指摘する。
さらに巨大なモールへ買い物客が流出
ゆめタウン八代も決して安泰ではない。さらに巨大なモール、例えば熊本市の「ゆめタウンはません」や「イオンモール熊本」などに客を奪われる可能性がある。実際、熊本県内では商業施設の大型化が進み、中小規模のモールは生き残りが厳しくなっている。
八代市の人口は約12万人。ゆめタウン八代の商圏は八代市だけでなく、周辺の氷川町や芦北町なども含むが、それでも熊本市の巨大モールには及ばない。消費者の「より良いものをより安く」という欲求は際限がなく、都市間競争はますます激化している。
モールは弱肉強食
坪川氏は、「かつて水俣が八代に敗れたように、今度は八代が熊本に敗れつつある。モールの栄枯盛衰は、交通インフラの整備や都市の成長と密接に関係している」と語る。
イオン八代の現状は、地方都市におけるモールの厳しい現実を如実に示している。フードコートの全滅、専門店エリアの空き区画、そして寂しげなBGM。この光景は、日本各地の廃墟モールで見られる共通の風景だ。
本連載では、今後も廃墟モールの事例を紹介し、その背景にある経済メカニズムを解き明かしていく。



