人手不足や人工知能(AI)、デジタルトランスフォーメーション(DX)の普及で求人市場の活況が続き、企業の採用方法が多様化している。東京商工リサーチ埼玉支店が6月に実施した埼玉県内企業アンケート(有効回答数262社)では、43.0%の企業がリファラル採用(社員が紹介)を実施したことが分かった。
リファラル採用の定着率が最高
全国回答集計(有効回答数6475社)ではリファラル採用実施率が実に半数に上り、浸透度がうかがえる。また、採用方法のうち最も定着率が高い方法を聞いたところ、「リファラル採用」が24.2%と最も高く、次いで「ハローワークを通じた中途採用」(10.1%)、「会社のHPや採用広告を通じた中途採用」(9.1%)、「新卒採用」(7.1%)という結果であった。
一方で、定着率が最も低い採用方法を問うと「転職エージェントからの紹介」が13.5%で最も高く、次いで「新卒採用」(12.0%)と従来型の新卒採用では定着効果が低いと考える企業も多い。企業は採用方法にあらゆる工夫を凝らし、定着率の向上を図っている。
賃上げ以外の定着策も広がる
8月のアンケートでは県内の8割超が賃上げを実施。賃上げ率は平均で4.6%、全国回答集計では5.1%に上るが、賃上げだけではない。働きがいや評価への不満、将来的なキャリア不安など若年世代の価値観の変容に伴い、人材定着に向けた企業努力は県内でも多様化している。
家電販売店を運営するでんきち(さいたま市中央区、宮貴広社長)では、賃上げの実施やインセンティブだけでなく、「ネクストチャレンジ」制度で異動先の希望を聞き、極力希望先に配属する努力や家族との時間を大切にするための「家族参加型研修旅行」を実施している。年功序列がなく、20代店長が全体の3割を占めるなど、若手人材の定着とモチベーション向上を図ることで活気ある職場を生んでいる。
ユニークな福利厚生で定着を図る企業も
信号設備工事を手掛ける協栄シグナル設備(久喜市、下田恵生社長)では、食事代の補助に加え、遊興費に限定した年間15万円の支給を行い、役員と社員がレジャーを共にすることもあるという。そして、肉体労働で疲労した身体をほぐすため、月に4回整体師を会社に招き、社員は無料で施術を受けられる。こうしたユニークな人事制度で定着を図っている。
新卒者に時間を投下し、充実した福利厚生で育成する。あるいは、即戦力で実力を発揮させる。さらには、リファラル採用やアルムナイ採用(退職者の再雇用)で社内の雰囲気にいち早くなじむ制度を取り入れる。経営の神様と呼ばれる松下幸之助が残した「企業は人なり」の言葉の通り、企業の人事戦略が問われている。AIの台頭や金融技術の向上が目覚ましくても、今後企業の信用や評価軸において、人事戦略がより重要なファクターとなる時代に突入しているのかもしれない。



