「元が取れすぎる」とSNSで話題の焼肉チェーン「プレミアムカルビ」が、全国展開を加速している。牛ヒレや牛タンなど高級部位を食べ放題で提供しながら、驚きの低価格を実現するそのビジネスモデルは、単なる焼肉店の枠を超えた仕掛けに満ちている。
「元が取れすぎる」の理由
プレミアムカルビの最大の特徴は、そのコストパフォーマンスの高さだ。豪快な塊肉で提供される「特選牛ヒレステーキ」や、厚切りの牛タンが食べ放題のコースは、一般的な焼肉店の半額以下と評判だ。なぜこれほど低価格が実現できるのか。その秘密は、徹底した業務効率化と、デザート部門の独自戦略にある。
セントラルキッチンと分業制で品質を均一化
「全てのアイテムの商品企画を専属パティシエに任せ、熟練度によって品質にばらつきが出る工程はセントラルキッチンに集約しました。お客様の目に触れる最後の仕上げだけを店舗で力を入れられるようにしました」と、同社の広報担当者は語る。
手作りデザートを強みにしながら店舗展開を進める同社は、裏側でこうした工程の分業を実現。セントラルキッチンで生地やクリームのベースを一括生産し、各店舗では盛り付けや最終仕上げに専念することで、品質のばらつきを抑えつつ、人件費や食材ロスを削減している。
「元プロ」のママ層がスイーツ品質を支える
スイーツの品質を支えているのは設備だけではない。プレミアムカルビでは、結婚や出産を機に現場を離れた元パティシエの女性たちを積極的に採用している。
洋菓子店で培った技術を持ちながらも、子育てとの両立からフルタイム勤務が難しくなった人材は少なくない。パティシエスタッフのなかにはパティスリーで働いていたという女性も少なくない。プレミアムカルビにとっては即戦力となる貴重な存在だ。
「実は地域には、そうした経験者がたくさんいるんです。せっかく専門技術を持っているのに、そのまま埋もれてしまうのは非常にもったいない」と広報担当者は話す。
そこで同社は近隣店舗で短時間勤務できる環境を整えた。求人募集でもあえて「パティシエ募集」と打ち出し、専門職としての経験を評価しているという。
「もう一度お菓子づくりの仕事に戻りたいという方に力を発揮していただけるのは、弊社としても心強いですし、どんどん力をお借りできればと思っています」
独自の「パティシエ認定試験」で品質を標準化
さらに社内には独自の「パティシエ認定試験」も設けている。クリームの絞り方や仕上げの技術を一定水準で標準化して店舗ごとの品質差を抑え、技術をレベルアップさせているのだ。
この試験は定期的に実施され、合格者には認定証が授与される。これにより、経験の浅いスタッフでも熟練パティシエと同じレベルのクオリティを再現できるようになるという。
コロナ禍をチャンスに変えた戦略
プレミアムカルビは、コロナ禍を成長の好機と捉えた。多くの飲食店が営業を縮小する中、テイクアウトやデリバリーに力を入れ、新たな需要を開拓。さらに、店舗物件の賃料が下落したタイミングで積極的に出店を進めた。
「コロナ禍で外食産業全体が苦戦する中、逆にチャンスだと考えました。良い物件が空き、条件も良くなったので、一気に店舗数を増やしました」と同社の経営陣は振り返る。
その結果、現在は首都圏を中心に20店舗以上を展開し、今後は全国主要都市への進出を計画している。特に地方都市では、焼肉店の高級化が進む中、プレミアムカルビの「お得感」が強く支持されているという。
焼肉業界に新たな風
焼肉業界では近年、高級路線と低価格路線の二極化が進んでいる。プレミアムカルビは、その中間とも言える「高品質・低価格」のポジションを確立。牛ヒレや牛タンといった高級部位をリーズナブルに提供することで、他チェーンとの差別化に成功している。
「焼肉は特別な日に食べるもの、というイメージを変えたい。日常的に気軽に楽しめる焼肉を提供したい」と同社は語る。そのための原資は、徹底した効率化と、人材活用の妙にある。
今後、全国展開が進めば、焼肉業界の勢力図が変わる可能性もある。プレミアムカルビの挑戦は、まだ始まったばかりだ。



