LINEヤフー(現LINEヤフー)の前会長である川邊健太郎氏が、PayPayが2018年に実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」の舞台裏を明かした。キャンペーンは、ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏との緊迫した会議を経て誕生したという。
還元率20%の衝撃的な決断
川邊氏によると、キャンペーン開始前の会議で、当初の還元率は8%と想定されていた。しかし、孫氏が「20%にしろ」と一蹴。川邊氏は「まったくの想定外だった」と振り返る。還元率の決定に続き、予算の上限も未設定だったため、川邊氏は慌てて孫氏を追いかけた。
エレベーターホールに向かう廊下で、川邊氏は「予算の上限は100億円でどうか」と提案。孫氏は「本当は1000億円くらいやりたいが」と述べつつ、「じゃあ、いったん100億でやってみるか」と渋々了承した。
「どっちかが潰れるまで」の覚悟
承認を得た川邊氏がホッとしたのも束の間、最後に孫氏に問いかけた。「このキャンペーンをやれば、LINE Payが必ず追撃してくる。とんでもない叩き合いになる。覚悟はあるか?」。すると孫氏は足を止め、振り返り、「上等だよ。どっちかが潰れるまでやってやるよ」と答えたという。
この言葉が、キャンペーンを決定的なものにした。川邊氏は「狂気の沙汰」と表現しながらも、その覚悟が成功の原動力だったと語る。
予算100億円、わずか10日で枯渇
キャンペーン開始後、対象店舗には長蛇の列ができた。社内では「2カ月は持つ」と見込んでいた100億円の予算は、わずか10日間で使い切った。しかし、そのインパクトは絶大で、ユーザー数は急増。QRコード決済市場におけるPayPayの圧倒的な地位を築くきっかけとなった。
川邊氏は「教科書通りのマーケティング戦略では絶対に勝ち目はなかった」と振り返り、孫氏の破天荒な決断が市場を変えたと結論づけている。
競合への影響と市場の変革
このキャンペーンは、競合他社にも大きな影響を与えた。LINE Payをはじめとする他社も還元率を引き上げるなど、激しい競争が繰り広げられた。結果的に、日本のキャッシュレス決済普及率は急上昇。PayPayはキャッシュレス社会の象徴的存在となった。
川邊氏は「あの狂気の決断がなければ、今のPayPayはなかった」と強調。孫氏の「どっちかが潰れるまで」という言葉が、文字通り業界を揺るがした。



