PayPay「100億円キャンペーン」は狂気から生まれた:孫正義の決断とディスラプションの本質
PayPay「100億円キャンペーン」は狂気から生まれた

LINEヤフー(現LINEヤフー)の前会長である川邊健太郎氏が、PayPayの初期戦略を振り返り、その「狂気」とも言えるキャンペーンの全貌を明かした。サービス開始からわずか2カ月後、PayPayは第2弾として「100億円キャンペーン」を投下。これにより一気に数百万人のユーザーを獲得し、サービス開始から1年足らずで1000万人を突破するという快挙を達成した。

川邊氏は、このキャンペーンを「マーケティングの教科書ではとうてい説明できない『焦土作戦』」と表現する。競合他社が入り込む隙間もないほど、圧倒的な物量で市場を焼き尽くす戦略だった。第1弾のキャンペーンはわずか10日間で終了したものの、その爪痕は日本列島の隅々にまで深く刻まれた。それまでキャッシュレス決済に興味のなかった多くの人々が、この熱狂的な「お祭り」に参加する形でPayPayのアプリを入れ、店頭でスマホをかざし、その利便性を知ることとなった。

批判を浴びた「バラマキ」戦略

メディアや専門家からは「バラマキだ」「消耗戦を仕掛けてどうするのか」「単なるポイント目当てが中心なのでは?」といった数多くの批判が寄せられた。しかし、川邊氏は「既存の市場を破壊(ディスラプト)するためには、時にはこうした『狂気』とも思えるような奇襲が必要だった」と確信を持って振り返る。

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銀行やクレジットカード会社といった金融業界のオールドプレーヤーたちが、何十年、いや、100年以上の歳月をかけて築き上げてきた堅牢な決済システム。その牙城に、PayPayのようなベンチャーが風穴を開けようというのだ。教科書どおりのマーケティング戦略でちまちまと戦っていては、絶対に勝ち目はないというのが川邊氏の見解だ。

ディスラプションの本質は「非連続な一撃」

川邊氏は、ディスラプションの本質について「彼らが長年かけて作り上げてきたルールや慣習といった土俵の上で戦うのではなく、その土俵そのものをひっくり返してしまうような非連続な一撃」と説明する。その破壊的な一撃は、しばしば合理性や常識を超えた「狂気」から生まれるという。

そして、その「狂気」を知らしめてくれたのは、孫正義という傑物だったと川邊氏は語る。孫正義氏は「上等だよ。どっちかが潰れるまでやってやるよ」という言葉で、この前代未聞のキャンペーンを後押ししたという。

「どっちかが潰れるまで」の結末

この「100億円キャンペーン」は、結果的にPayPayの圧倒的な市場シェア獲得につながり、日本のキャッシュレス決済市場を大きく変革した。競合他社は追従を余儀なくされ、業界全体の競争が激化。PayPayは現在、日本最大のQRコード決済サービスとしての地位を確立している。

川邊氏は、この経験から「既存市場をディスラプトするには、時に狂気が必要だ」と強調する。常識にとらわれない発想と、それを実行に移す勇気が、イノベーションを生む原動力となるという教訓を、PayPayの成功は私たちに示している。

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