日産と電通、巨額の本社ビル売却
経営不振に陥っている日産自動車は、横浜みなとみらいに所在する本社ビルを台湾のミンスグループに売却し、970億円のキャッシュを獲得した。一方、電通は東京・港区汐留の本社ビルをヒューリックに2680億円で売却。ヒューリックはその後、このビルを外資系ファンドに転売している。いずれの企業も売却後も本社ビルを賃借しているが、電通は本業で依然として赤字決算が続いており、不動産スピンオフが経営改善を約束するものではないと指摘されている。
サッポロ4770億円、西武4000億円――外資が落札
アクティビストである3Dインベストメントの要求により、サッポロホールディングスは不動産子会社サッポロ不動産開発の株式売却を決定。二度の入札を経て、2025年12月に譲渡先が決定した。落札したのは米国のプライベート・エクイティ・ファンドKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)と香港に本社を置くPAG(パシフィック・アライアンス・グループ)連合で、価額は4770億円に上る。
同じく3Dインベストメントから不動産スピンオフを要求されていた西武ホールディングスは、2024年12月に東京・港区赤坂の東京ガーデンテラス(赤坂プリンスホテル跡地の複合ビル)を売却。買い手は米国の大手投資ファンドであるブラックストーンで、売却価格は4000億円だった。売却益は約2600億円とされ、うち1200億円を負債返済、700億円を上限に自社株買いに充当し、資本効率の改善を図る。配当も1株あたり30円から40円に引き上げられ、アクティビストの思惑通りの展開となっている。
株主資本主義の波と経営の課題
「株主資本主義」とも呼ばれるこうした動きは、都心の優良立地にオフィスを構え、生産性の低い業務を続けてきた日本の大企業を震え上がらせている。アクティビストは、経営者に対して耳を傾けない姿勢を無能と断じ、株主総会での経営陣刷新やTOB(敵対的買収)などの手段に出ることもある。
しかし、優良不動産を手放した後、企業は競争上の優位性の基盤を失い、本業のみで勝負せざるを得なくなる。日産や電通の事例が示すように、不動産売却が必ずしも経営改善につながらないケースもあり、今後の厳しい経営環境が予想される。
外資ファンドによる不動産取得の加速
日本古来の大企業に攻勢をかけるアクティビストの背後には、外資系の不動産投資ファンドが控えている。サッポロや西武の事例は、外資ファンドが日本企業の優良不動産を次々と獲得し、「静かなる占領」を進めている実態を浮き彫りにしている。これらの取引は、日本企業の経営戦略や資本効率に根本的な変革を迫るものとなっている。



