マウスコンピューターは事業戦略説明会を開催し、2025年度の実績と2026年度の重点施策を説明した。2年連続で過去最高売上を達成した同社は、「ものづくり10」を発展させた新たな事業方針「MOUSE」を掲げ、AI PC時代を見据えたブランド強化と法人市場の拡大を進める。
「ものづくり10」を発展、「MOUSE」で次の成長へ
マウスコンピューターは2025年度、売上高730億円(前年比112%)となり、2年連続で過去最高を更新した。PC販売台数は前年比108%、iiyamaブランドの液晶モニターも同109%と伸長し、販売数量ベースでも成長を維持した。
同社代表取締役社長の軣秀樹氏は「1台でも多く販売することを目標に取り組んできた」と振り返る一方、「部門や会社が抱える課題を、すべてものづくりにつなげて解決していくことが、マウスコンピューターに最も合ったやり方だと考えている」と述べた。
同社ではこれまで、「ものづくり10」と呼ぶ10項目の考え方を社内で共有してきた。「ものづくりは、お客様への想い」「ものづくりは、優先順位」「ものづくりは、次世代へのバトン」など、製造部門だけではなく、会社全体の活動をものづくりとして捉える考え方だ。
軣氏は、「これまでは社内を中心に進めてきたが、今後は社外にも発信していく」と説明。その上で、2026年度はこれをさらに発展させる形で、「MOUSE」をキーワードとする5つの事業方針を掲げた。
具体的には、「Monetize & Market Share!(価値を売上とシェアに変える)」、「Operational Excellence!(スピード・品質・納期を仕組みで担保)」、「User Value Expansion!(ユーザー価値を製品+体験へ拡張)」、「Sustainable Growth Engine!(成長が止まらない会社構造へ)」、「Empower People!(人と組織の力を最大化)」の5つだ。なかでも品質・納期を支える仕組みづくりと、製品だけでなく体験まで含めたユーザー価値の拡大を重点施策として位置付けた。
軣氏は、「ものづくり」の考え方を企業文化としてさらに浸透させる考えを示した。また、「Operational Excellence!」では品質や納期を仕組みで支える体制づくりを、「User Value Expansion!」ではAI PCやゲーミングPCなどを実際に体験してもらうことで、製品価値を体験価値へ広げていく方針を示した。
さらに、キッザニアへの出展やPC組み立て教室、eスポーツ大会への協賛などを通じ、「PC市場が低迷している今だからこそ、日本市場全体を盛り上げたい」と語った。
コンシューマ事業は「体験価値」を軸にブランドを強化
続いて、取締役の氏家朋成氏がコンシューマ事業の方針を説明した。氏家氏は2025年度は「5つの安心」を軸としたブランド訴求に加え、イベント出展やクリエイター領域での活動を通じて顧客との接点を拡大したと説明。パートナーとの協業施策も前年を上回り、リアルイベントを中心とした体験機会の創出に注力したという。また、広告施策やSNS、オウンドメディアもブランド認知の向上につながったとした。
AI PCは体験が重要
2026年度はAI PCを重点領域の一つに位置付ける。AI PCは新しいカテゴリーであり、スペックだけでは価値が伝わりにくいことから、実際に触れて体験してもらう機会を増やす考えだ。導入事例の充実やイベントなどを通じてエンドユーザーとの接点を広げるほか、AI PCならではの価値を訴求していく。
DAIV10周年でクリエイター市場を深耕
クリエイター向けブランド「DAIV」は今年2月に10周年を迎えたが、氏家氏は「まだ打ち手が足りていないので、さらにパートナーと施策を進めたい」と語った。用途ごとの推奨PCやソフトウェアとの連携を強化するほか、パートナー企業やイベントとの協業を進め、クリエイター市場での存在感を高める。一連の施策は、軣社長が掲げた「User Value Expansion(ユーザー価値を製品+体験へ拡張)」を具体化する取り組みと位置付けられる。
AI検索時代を見据え動画マーケティングを強化
マーケティング施策について、氏家氏は、AI検索の普及によってユーザーの情報収集行動が変化しているとの認識を示した。そのため、SNSやオウンドメディアでは動画コンテンツを強化し、各種SNSへ横展開することでブランドとの接点を増やす方針だ。このほか、ゲーミングPCではイベント出展やインフルエンサー施策を継続するほか、「STAGE:0」やアジア競技大会などeスポーツイベントへの協賛も実施する。AI PC、ゲーミングPC、クリエイター向けPCという各ブランドを、「体験」を軸に訴求することでブランド価値を高め、新たな需要の創出につなげる考えだ。
法人事業は「これがいい」と選ばれるブランドを目指す
法人事業については、取締役の金子覚氏が説明を行った。
「これがいい」と選ばれる法人PCへ
金子氏は、「これでいいではなく、『これがいい』と選ばれる製品を目指す」と語り、法人市場でさらなるシェア拡大を目指す考えを示した。2025年度はGIGAスクール構想を主軸としない中でも、法人事業は前年比114%の成長を達成。取引企業数も約3万社まで拡大した。一方、日本国内には約800万社の企業が存在するとし、「まだまだ成長の余地は大きい」とした。
AI活用を見据えた製品戦略
2026年度は、「マウスらしい製品」「安心のマウス」「発展と進化」の3つを柱に事業を展開する。製品面では、AI PCを単に販売するのではなく、「AIを活用して顧客が成功体験を得られる製品」を提供することを重視する。一方で、GPUを活用した新規顧客の開拓については、引き続き課題があるとの認識も示した。
納期・供給力を競争力に
金子氏は、マウスコンピューターの強みとして供給体制を挙げた。これまで課題としていた納期対応について改善を進めた結果、2026年4~6月は安定した製品供給を実現したという。金子氏は、今後もサプライチェーンを競争力として維持し、品質や納期を強みに法人市場での差別化を図る考えを示した。
デジタルマーケティングへ投資
法人市場でも、顧客がWebで情報収集を行ってから問い合わせるケースが増えているという。このため、セミナーやホワイトペーパー、導入事例に加え、SNSやオウンドメディア、リスティング広告、ディスプレイ広告などデジタルマーケティングへの投資を拡大する。また、販売パートナーとの連携も強化し、より大規模な案件の獲得につなげたい考えだ。
国産PC需要やセキュリティ需要を追い風に
金子氏は、新規販売店の増加や「国産PCを取り扱いたい」というパートナーの動きが広がっていると説明した。さらに、2026年4~6月には企業のセキュリティ対策の需要の高まりも感じているという。金子氏は「日本の顧客に満足・納得してもらえる製品を届けたい」と語り、こうした市場環境を追い風に、法人向けブランド「MousePro」の15周年も生かしながら、日本企業に「これがいい」と評価される製品づくりを進めていく考えを示した。
「ものづくり」を軸に、顧客との接点を広げる
今回の説明会で一貫していたのは、「ものづくり」を企業活動の中心に据えながら、顧客との接点を広げるという考え方だ。PC市場を取り巻く環境が変化する中、同社は「ものづくり」を土台に、コンシューマ市場では体験価値、法人市場では品質・供給力を競争力として強化する方針だ。AI PCの普及や国内市場の変化を見据え、それぞれの市場に合わせた戦略で成長を目指す。



