三重交通グループホールディングス(GHD、津市)の増田充康社長は読売新聞のインタビューに応じ、県内外での事業拡大や最新技術を導入した業務効率化、観光需要の取り込みなどを積極的に進める考えを示した。増田氏は6月に社長に就任したばかりだ。
事業好調で県外拡大
4か年の中期経営計画の最終年度となる今期、当期純利益の計画を上方修正したことについて、増田氏は「バス運賃改定に加え、賃貸ビル、ビジネスホテルなど各事業で想定を上回る収益改善があった」と説明。運輸、不動産、流通、レジャー・サービスの4事業のシナジー効果やリスク分散効果がグループの強みだと強調した。
今後は不動産事業で愛知県三河地域や静岡県西部での分譲マンション戸数拡大を図る。ビジネスホテルは2027年秋に熊本で九州地区第1号店を開業する予定だ。
バス運行でAI活用
バス路線網の維持が過疎地を中心に困難になっている現状について、増田氏は「マイカー普及やコロナ禍以降の生活スタイルの変化などもあり、全ての地域で従来の形で路線バスを維持することは難しい」と述べた。その上で、バスの小型化や維持費の抑制に加え、事前予約制の「オンデマンド交通」に人工知能(AI)を活用し、予約状況に応じたルート設定などで効率的な運行を促進する考えを示した。今年度は運行業務を受託する津市のコミュニティーバスで、定時定路線型からの移行を進めている。
自動運転バスの実証実験については、運転手不足への対応策の一つとして伊勢市や桑名市などと実用化に向けて取り組んでいる。現在は運転席に運転手が座る「レベル2」だが、再来年をめどに一定条件下で無人運転する「レベル4」の実証実験に着手したいとしている。
地元の観光資源を生かす
三重の観光の魅力について、増田氏は「伊勢神宮をはじめとする歴史や豊かな自然、食などが魅力の地域」と語り、名古屋や大阪など大都市に近く、観光や交流人口の拡大の可能性があると指摘。インバウンド受け入れが他の観光地と比べて十分ではない分、多くの観光客を呼び込める余地があるとした。
地域ごとの観光振興策としては、北勢地域では四日市の工場や大型観光施設、名古屋圏からのアクセスの良さを生かした日帰り型の誘客が考えられる。伊勢志摩や東紀州では自治体や他の交通事業者と連携しながら、歴史・文化や自然を生かした滞在型観光につなげたいと述べた。
近畿日本鉄道との連携については「近鉄はこの地域のブランド力強化を掲げており、人材交流などを通じて連携している」と説明。近鉄電車での来訪者をグループのバス・タクシーで観光地やホテルに運ぶなど、機能を組み合わせた観光モデルがつくれると語った。
アジア大会に期待
9~10月に開催されるアジア大会とアジアパラ大会については、観客や選手団の輸送で多くの予約を受けているほか、愛知県内や北勢地域のビジネスホテルで宿泊需要もあるとし、大会の観客に三重まで来てもらえるようPR活動を進めるとした。
増田氏は「考えるべきことはしっかりと考え、決めたことは実行する経営を目指す」とリーダー像を示した。新規事業のヒントにと3年ほど前にはドローンの国家資格である2等無人航空機操縦士も取得。「公共交通を守るには形を変える必要がある」と話す。
増田氏は1989年京大法学部卒、近畿日本鉄道入社。近鉄グループホールディングス(GHD)総合企画部長、執行役員秘書部担当などを経て、2023年に三重交通GHD執行役員に就き、今年6月に現職に。奈良県出身。趣味はサイクリング、ドローンの空撮など。61歳。
三重交通グループホールディングスは、1931年に前身の伊勢電鉄自動車が設立され、44年に県内の鉄道会社やバス会社6社との合併で三重交通となった。持ち株会社の三交ホールディングスは2006年に設立し、09年に三重交通GHDに商号変更。運輸や不動産、流通、レジャー・サービスの4事業を展開する。グループはGHDを含む26社で、全体の従業員数は5482人(今年3月末現在)。



