人口減少や少子高齢化が進む中、茨城県内でM&A(合併・買収)による事業承継を行う企業が増えている。大規模企業が引き継ぐケースも多く、承継を機に事業を拡大する企業も増加している。一方で、廃業の危機に直面する企業が多く潜在しているとみられ、制度の周知が課題となっている。
廃業を考えていたパン製造会社が承継
1952年に創業し、水戸市内で給食パンを製造してきた「西村パン」(水戸市常磐町)の西村世樹顧問(61)は「2年前は廃業を考えていた」と振り返る。後継者がおらず、業務過多に苦しんでいたという。
西村パンの事業は3月、新潟県上越市の総合食品会社「フーディーネットジャパン(FNJ)」が引き継いだ。仲介業者を通じてFNJとつながり、全従業員11人の雇用継続という条件を受け入れてくれたため、決断した。FNJの堀井祐介社長(50)は「西村パンの看板、歴史、信頼を買った。従業員の熱意も大切にする」と語る。
事業拡大と働き方改革
承継後は給食事業を中断し、直売所販売などに舵を切った。早朝に集中するパン作りを日中に移し、働き方の改善も図る。FNJが買収した笠間市の栗卸会社と連携して、新商品開発にも乗り出す予定だ。顧問として会社に残った西村さんは「従業員の雇用を守れてよかった。うまく軌道に乗り始めたので頑張っていきたい」と語る。
都内の仲介会社「M&Aキャピタルパートナーズ」で北関東を担当する企業情報部の須田真和次長(35)によると、県内では製造業やサービス業でM&Aに踏み出す企業が多い。人口減や若者の県外流出が背景にあるという。
支援センターの相談件数が増加
県内には、中小企業庁が設置する「県事業承継・引継ぎ支援センター」もある。各県のセンターと連携してマッチング企業を探すほか、手続きの助言や専門家の紹介を行う。セミナーや個別相談会を開き、近年は相談件数も増加傾向で、2019年度は184件だったが、25年度には523件に増えた。
M&Aが広まる一方で、FNJの堀井社長は、行政や金融機関の中小企業支援は「まだ不十分」と指摘する。M&Aでは、相手企業の財務・事業実態の調査や、交渉が必要になるが、仲介業者によっては高額な手数料を求められることもあるという。堀井社長は「そもそも苦しい状況にある地方の企業には負担が大きい」と語る。
また「承継を求める地元企業はまだまだ潜在している。まずは制度を周知し、隠れた需要を掘り起こしていくべきだ」と語る。



