日本政府は、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に計画する第3工場の建設に対し、最大で約1兆2000億円の補助金を拠出する方針を固めた。複数の政府関係者が明らかにした。この巨額の支援は、半導体の安定供給を確保し、経済安全保障を強化する狙いがある。第3工場は、最先端の3ナノメートル(ナノは10億分の1)品の生産を想定しており、2020年代後半の稼働を目指す。
TSMCの熊本進出と政府支援の経緯
TSMCは現在、熊本県菊陽町で第1工場と第2工場の建設を進めている。第1工場は2024年後半に量産開始予定で、主に車載用や画像処理向けの半導体を生産する。第2工場は2025年に着工し、2027年の稼働を計画。こちらはより高性能な6ナノ品の生産を目指す。政府は第1工場に最大約4760億円、第2工場に最大約7320億円の補助金を決定しており、今回の第3工場への支援を加えると、総額で2兆4000億円を超える規模となる。
第3工場の詳細と経済効果
第3工場は、熊本県内の別の場所に建設される可能性が高い。生産する3ナノ品は、スマートフォンや人工知能(AI)向けの最先端半導体として需要が見込まれる。政府関係者は「半導体はデジタル社会の基盤であり、国内で最先端品を生産できる体制を整えることは極めて重要だ」と述べている。また、TSMCの進出により、関連企業の集積や雇用創出など、地域経済への波及効果も期待される。
国際的な半導体競争と日本の戦略
世界的な半導体不足を背景に、各国は半導体の国内生産を強化する動きを加速させている。米国はCHIPS法に基づき約527億ドルの補助金を用意し、欧州連合(EU)も欧州半導体法で430億ユーロ以上の投資を計画。日本も半導体戦略の一環として、TSMCの誘致に加え、国産半導体メーカーのラピダスにも最大約9200億円の支援を決定している。経済産業省の幹部は「半導体の安定調達は国家安全保障に関わる課題だ。官民一体で取り組む必要がある」と強調する。
財政負担と今後の課題
一方で、巨額の補助金に対する財政負担の増大を懸念する声もある。政府は2023年度補正予算で半導体関連に約1兆9000億円を計上したが、今回の第3工場支援には別枠での予算確保が必要となる。また、TSMCへの過度な依存を避けるため、国内半導体産業の育成や技術流出の防止策も求められる。専門家からは「補助金の効果を最大化するには、人材育成や研究開発の強化が不可欠だ」との指摘が出ている。
TSMCの熊本進出は、日本の半導体産業復活の象徴とされる。しかし、激化する国際競争の中で、持続可能なエコシステムを構築できるかが問われている。



